まほろ駅前番外地 DVD BOX

『モテキ』の大根仁監督が三浦しをんの同名小説をドラマ化したバディストーリーのBOX。多田便利軒にスタンガン西村という男が依頼にやって来た。プロレスラーである西村は、自分の引退試合の相手を務めてほしいと言い出し…。全12話を収録。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

2013年にテレビ東京でドラマ化されました。原作にないオリジナルストーリーが多数織り込まれているそうです。

2013年3月度ギャラクシー賞月間賞を受賞し、平成25年日本民間放送連盟賞のテレビドラマ部門・優秀賞を受賞しています。未見です。

まほろ駅前番外地

本書『まほろ駅前番外地』は、『まほろ駅前多田便利軒シリーズ』の番外編として位置づけられる短編集ですが、内容面でも時系列的にも、そのままシリーズを構成している作品だと言えます。

全七編からなる短編集ですが、多視点で構成された少々毛色の変わった作風になっていて、そういう意味では「番外編」なのかもしれません。

 

東京都南西部最大の町・まほろ市の駅前で便利屋を営む多田と、高校時代の同級生・行天。汚部屋清掃、老人の見舞い、庭掃除に遺品整理、子守も料理も承ります―。多田・行天の物語とともに、前作でお馴染みの星、曽根田のばあちゃん、由良、岡老人の細君が主人公となるスピンアウトストーリー七編を収録。(「BOOK」データベースより)

 

三浦しをんという作家の新たな側面を見たと思ったのが、二作目の『星良一の優雅な日常』です。

というのも、読みやすい点は変わらなくても、文体が少しですがハードボイルドタッチなのです。まほろ市の「裏社会の貴公子」星良一の、恋人の新村清海に振り回されながらも「業務」をこなす、とある一日を描いた作品です。

どことなく石田衣良の『池袋ウエストゲートパークシリーズ』に出てくるG-Boysのリーダー安藤崇を思わせるこの男の、思いがけない側面が描かれていて、個人的には一番好きな作品です。

 

 

始めの短編は「光る石」。

前作に登場し、横中バスの運行本数に異常なまでの執着を見せたのは岡氏でした。その夫人の視点で描かれる話が「岡夫人は観察する」。

まほろ市民病院に入院中の曾根田のばあちゃんの青春を描く「思い出の銀幕」。

第一作にも登場した田村由良の視点の短編が「由良公は運が悪い」。

今後のシリーズの中でも重要な位置を占めるであろう柏木亜沙子が登場する「逃げる男」。

それに「なごりの月」。

 

それぞれに、ちょっと笑えたり、思わず自分の内面を見返したり、と、なんとなく自分の来し方を振り返ってしまうような、バラエティに富んだ多視点の作品集です。

まほろ駅前多田便利軒 [DVD]

三浦しをんの直木賞受賞原作を、瑛太と松田龍平共演で映画化。東京郊外のまほろ市で便利屋を営む多田の下に、風変わりな同級生の行天が転がり込む。一晩だけのはずが行天は一向に出て行かず、多田はしぶしぶ便利屋の助手をさせることに…。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

未見ですが、是非見たい映画です。なお、続編も作成されており、更に、『まほろ駅前番外地』はテレビ東京でドラマ化されています。

まほろ駅前多田便利軒

本書『まほろ駅前多田便利軒』は、『まほろ駅前シリーズ』の第一作目であり、第135回直木賞を受賞した長編の痛快小説です。

東京都の南西部に位置する町田市をモデルとした「まほろ市」という架空の街を舞台にして、多田と行天という高校の同級生コンビが繰り広げる珍騒動を描き出した、魅力あふれる作品です。

 

まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ。ペットあずかりに塾の送迎、納屋の整理etc.―ありふれた依頼のはずがこのコンビにかかると何故かきな臭い状況に。多田・行天の魅力全開の第135回直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

本書『まほろ駅前多田便利軒』の主人公は便利屋を営んでいる多田啓介という、もう青年とはいえない男です。離婚歴のある彼の過去には子供の絡んだ哀しい過去があるのですが、そのことは少しずつ語られていきます。

その多田のもとに高校時代の同級生である行天春彦という男が転がり込んでくるところから物語は始まります。

この行天という男が曲者であり、この物語の性格を決定づけていると言ってもいいでしょう。とにかく、ユニークなのです。

 

人気のある作家は大体そうだと思うのですが、面白いと思う作品は登場人物の性格付けが良くできていて飽きさせません。本書も二人のキャラクタが良く書き込まれています。

普通ではあり得ない状況を、それなりのリアリティを持って描写するその筆力は見事です。

 

本書『まほろ駅前多田便利軒』を読んでいて頭から離れなかったのは、映画化された本作の予告編でみた行天役の松田龍平のイメージです。

それはまた、東直己の『探偵はバーにいる』を原作とする映画版『探偵はBARにいる』シリーズでの「高田」の印象に通じるものでもあります。

ただ、本書の「行天」と「高田」とに共通するのは少々変人で、腕っぷしが強いというところだけなのですが。そしてそのイメージは決して邪魔ではありませんでした。それは松田龍平という役者の上手さであるのかもしれません。

 

 

また、三浦しをんの作品はとても読みやすい作品ばかりなのですが、本書『まほろ駅前多田便利軒』は、もその例にもれません。

この読みやすさをライトノベル風と評し嫌う人もいて、その批判は内容が伴っていないというニュアンスを含むようです。

しかし、三浦しをん作品については、読みやすく楽しいのは勿論、人間も書き込まれていると思え、逆に評価は高いと思います。作品に対する感想は人それぞれだなと思うばかりです。

本書『まほろ駅前多田便利軒』に取り上げられている物語は決して明るいものばかりではありません。親殺しや赤ちゃんの取り違えなど。どちらかと言えば暗いテーマばかりです。

ところが、本書の二人が依頼を処理していくうちに、その暗い筈の問題提起はうまく回収されていきます。この作者は暗い話を軽くユーモアで包みながら、上手にまとめていくのです。

 

とにかく、個人的にはどストライクの作品なので続編を読みたいと思います。

舟を編む 通常版 [ DVD ]

松田龍平、宮●崎あおいの共演で、三浦しをんの同名小説を映画化した感動ドラマ。出版社勤務の馬締光也は言葉に対する天才的なセンスを見出され、辞書編集部に異動になる。個性派揃いの辞書編集部の中で、馬締は辞書編纂の世界に没頭していく。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

テレビで放映されたものを見たのですが、原作の雰囲気もそこそこに維持していて、良い出来、と言えるのではないでしょうか。

 

馬締という朴訥なキャラクタ―を松田龍平というどちらかと言うと現代的なスマートな役者が演じることに疑問もあったのですが、さすがの役者さんです。きちんと馬締光也を作り上げられていたのですから見事でした。

原作者のこの映画に対する想いを読むと、当然のことなのですが、活字と映画との差異という新たな視点も見え、原作と併せての映画の見方もまた新たな視点を教えられました。

舟を編む

本書『舟を編む』は、辞書の編纂という、私達が普段利用していながらその裏側を何も知らない世界を垣間見せてくれる長編小説で、2012年の本屋大賞を受賞した作品です。

この辞書編纂の作業を描いて「辞書」の世界への知的好奇心を満たしてくれるとともに、この編集チームの人間模様が面白く、爽やかな感動をもたらしてくれます。

出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!(「BOOK」データベースより)

 

馬締光也は先任者の荒木公平が定年で退職した後を受け、辞書編集部を継ぐことになります。

その馬締光也を中心として荒木公平を顧問とし、国語学者の松本朋佑を監修者として、中型の辞書「大渡海」出版を目指す玄武書房辞書編集部の努力が描かれています。

 

辞書の編纂という業務は想像以上の困難を伴う作業でした。

モデルとなっている「大渡海」という中型の辞書でその見出し語は二十万語を越えるそうです。その見出しの大半にある使用例や、用例には一言たりともミスがあってはなりません。その校正の作業の膨大さは大変なものです。

更には辞書の装丁や紙質へのこだわりと、為すべき仕事は山積しています。そうした編集者の苦労の一端が読者の眼に示されます。

 

読者はその作業の困難さに眼をみはりつつ、物語の世界にどんどん引き込まれていきます。更に、馬締光也には林香具矢という女性が現れ、その成り行きも気になるところです。

 

本書『舟を編む』は、編集作業の困難さを示し馬締が編集作業に没頭することになるまでの前半と、後半の辞書の完成に至るまでの話とでは十数年という時の経過があります。

登場人物も変化を見せ、前半では馬締とは何もかの反対の性格の西岡正志という男が仕事上のパートナー的存在として配置され、後半では西岡の位置に岸辺みどりという女性が配置されることになります。

補佐する人物の切り替えで年月の経過を示し、同時に読者の関心を新たなものとしているようです。

 

ただ、今のデジタル全盛の時代の辞書作成作業が本書と同様なのか、結局はアナログなカードを使用することがその人のスタイルならば仕方が無いと言えるのか、少々気になった点でした。

 

本書『舟を編む』は松田龍平主演で2013年に映画化もされ、2014年春には早くもテレビの地上波でも放映されました。

 

 

蛇足ながら、本書はどことなく夏川草介の『神様のカルテシリーズ』を思い出す作品でもありました。

 

 

どのようなことでそうした印象を持つに至ったのか、はっきりとはしませんが、第一に文章のタッチが似ていると感じたのでしょう。

そして、共に自分の仕事に真摯に取り組む主人公とそれを支える女性の存在が描かれている点を思ったようです。

そしてその女性は手に職を持ち、自分というものをきちんと持った女性なのです。この両作品で主人公を支える女性を宮﨑あおいが演じていました。

風が強く吹いている [コミックス 全6巻]

陸上界期待の逸材だったカケルは万引き犯として追われたところを寛政大学のハイジに救われる。連れて行かれた古アパート・竹青荘でなぜかシロートの住人たちと箱根駅伝を目指すことに…。直木賞作家・三浦しをんの傑作青春小説を大胆に漫画化!!(「商品の説明」より)

 

未読です。

風が強く吹いている [ DVD ]

直木賞作家・三浦しをんの小説を映画化。素人同然の寄せ集め陸上部が、箱根駅伝出場を目指して奮闘する青春群像劇。ケガで走ることを諦めたハイジとある事件を契機に陸上の世界から姿を消した天才ランナー・カケルが運命的な出会いを果たし…。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

駅伝というスポーツの映像化はやはり難しいのでしょう。若干、期待が先行し過ぎたのか、絶対の自信を持って勧める、とまでは言えません。

 

特に、走りの練習の場面は、走りの素人が他の強豪校に伍して箱根駅伝に出場するに至ることを納得させるだけのものがあるとは言えず、残念なものがあります。

しかし、映画それ自体はそれなりの面白さは感じました。

風が強く吹いている

箱根駅伝を走りたい―そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何?走るってどういうことなんだ?十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく…風を感じて、走れ!「速く」ではなく「強く」―純度100パーセントの疾走青春小説。(「BOOK」データベースより)

 

箱根駅伝を題材にした長編の青春小説です。

 

駅伝最高峰の舞台である箱根駅伝。その箱根駅伝で走る程の才能豊かな人間が一つのぼろアパートに集まっている、という舞台設定はあまりにも都合がよすぎると思われます。

しかし、その点に目をつぶれば物語の中に一気に引き込まれてしまいました。

 

主人公ハイジが一人の天才ランナーカケルを見つけたことで、ハイジが住む寮に暮らす面々と共に自身の夢であった箱根駅伝に挑戦しようする物語です。

私がもう走れない体になっているので特に思うのかもしれませんが、ただひたすら走るというその行為は人間としての本質であり、とても美しいと思うのです。そのことを改めて思い出させてくれた作品です。

勿論主人公ハイジやカケルの内面の葛藤や、チームが走ることへの障害など、物語もよくできていて、感情移入してしまいました。

箱根駅伝をテーマにした作品と言えば、警察小説でも有名な堂場瞬一チームがあります。この作品は箱根駅伝本戦出場を逃した大学から、予選会で個人成績が上位に位置した選手が選ばれる学連選抜チームを主題とした作品でした。

 

 

また陸上スポーツをテーマとした作品と言えば佐藤多佳子の『一瞬の風になれ』も素晴らしい出来でした。