『答え合わせ』とは
本書『答え合わせ』は、2024年10月にマガジンハウスから240頁の新書として出版された、漫才コンビ「NON STYLE」の石田明自身が語る漫才論、芸人論です。
お笑いが大好きな私には、漫才を分析し、その構造を言語化して目の前に示してくれるこの本は驚き以外の何物でもありませんでした。
『答え合わせ』の簡単なあらすじ
1章 「漫才か、漫才じゃないか」への回答“漫才論”(「偶然の立ち話」が漫才の原点/真空ジェシカを筆頭に増えてきた「共闘型」 ほか)/2章 「競技化」で漫才はどう変わったか?“M-1論”(面白いだけではダメ、上手いだけでもダメ/「イキリ漫才」を捨てて構築した新たなスタイル ほか)/3章 「お笑いの得点化」という無理難題に挑む“採点論”(「5つの採点基準」で「各20点ずつ」つける/2023年敗者復活審査で考えていたこと ほか)/4章 路上から王者へ、挫折からの下克上“コンビ論”(姉に連れて行かれた劇場で「漫才」に魅了された/初のネタ披露は「修学旅行」 ほか)/5章 漫才、芸人、お笑いの明日はどうなる?“未来論”(今の若手は「見せ方」が足りない/「台本の書き方」も知らないといけない時代 ほか)(目次(「BOOK」データベースより))
“M-1 2008優勝”“生粋の漫才オタク”がはじめて語る「漫才論」「M-1論」「芸人論」(「BOOK」データベースより)
『答え合わせ』の感想
本書『答え合わせ』は、漫才オタクのノンスタイル石田が漫才を分析し、当該の漫才が面白い理由を教えてくれるユニークな作品です。
これまでも漫才の構造について語る人がいないことはありませんでした。
漫才コンビ「笑い飯」の哲夫や、今は引退してしまった島田紳助も漫才について語ったことはありましたが、それはあくまで番組の中でのフリートークにおいてのものにすぎませんでした。
しかし、本書はそうした個人のお笑い論とは異なり、きちんと古今の漫才を分析し、根拠を示したうえで一冊の本としてまとめられたものです。
本書はあくまでノンスタイル石田の個人的な分析の結果を示したものではあります。
しかしながら、漫才とは「偶然の立ち話」だというその指摘には納得させられるものがあり、漫才を見聞きするうえで参考になるものです。
お笑いはあくまで個人の感覚によるものであり、分析し論じるものではないという考え方もあるかもしれませんが、少なくとも本書を読む限りの漫才論はとても面白く、また興味を持って読むことが出来ました。
現在の漫才界で漫才を論じるとすれば、北野武(ビートたけし)や、先に述べた「笑い飯」の哲夫や「ナイツ」塙宣之などが挙げられると思います。
北野武(ビートたけし)は出版数が多く、そのうち漫才論があるのか、あるなら何冊くらいかよくわかりませんでした。
「ナイツ」塙宣之には『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』という作品があるらしいのですが、私は未読です。
しかし「笑い飯」の哲夫は、少なくとも2025年8月の時点では、仏教関係の例えば『ブッダも笑う仏教のはなし』のような書籍は何冊か出版されていりますが、お笑いを論じた作品はないようです。
漫才ではありませんが、落語家の世界を描いた小説といえば全くのノンフィクション作品として、佐藤多佳子の『しゃべれどもしゃべれども』があります。
そして、実在の落語家を描いた作品として、結城昌治の『志ん生一代』や安藤鶴夫の『三木助歳時記( 河出文庫 上・下二巻 )』などがあります。
ともあれ、特に漫才の世界では、近年は「やすしきよし」のような「芸」と呼べるほどの話芸を見せる芸人はあまり見当たらないかもしれません。
しかし、それでも「お笑い」としての漫才を分析した本書は読みごたえがありました。
