私立探偵の畝原はある夜、なにかから逃げている様子の少女を目撃する。乗っていたタクシーで慌てて引き返すものの、少女の姿は忽然と消えていた。翌日、無残な遺体となって発見される少女。畝原は、自責の念から独り聞き込みを行うが、少女の両親の態度に不審を抱くのだった。さらに、かつて連続殺人を犯した少年が周辺に住んでいるという噂が…。果たして少女殺害事件との関わりはあるのか。そして第二の殺人事件が―。私立探偵・畝原シリーズ待望の文庫化。(「BOOK」データベースより)
探偵・畝原シリーズの第七弾の長編ハードボイルド小説です。
人気作家なのだから当たり前ではあるのだけれど、この作家は物語の作り方が上手いと思います。
このシリーズでも人物造形が極端だとは思いながらも、ありがちとも思える人物、そこまで行くかという人物が多数登場し、そうした人物がストーリーを面白くさせていることもまた間違いないと思われます。
謎解きが好きな人たちには物足りなさがあるかもしれませんが、個人的には、ストーリー重視の物語が好きなので、なお更にはまるのだと思っています。また、社会派と言われる作家の方が好みだし、この人も現実社会に起きている事件をヒントに物語を構築しているようで、そこが私の好みに合うのでしょう。
主人公が家に帰り、家族の日常の微笑の中に幸せを感じるくだりなど、私の好みにぴたりとはまるのです。