小舟町の芳古堂に奉公する栄二とさぶ。才気煥発な栄二と少し鈍いがまっすぐに生きるさぶ。ある日、栄二は身に覚えのない盗みを咎められ、芳古堂から放逐されてしまう。自棄になった栄二は身を持ち崩し人足寄場へ送られるが―。生きることは苦しみか、希望か。市井にあり、人間の本質を見つめ続けた作家の代表作。(「BOOK」データベースより)
人間の優しさについて深く考えさせられる、山本周五郎が描く長編の人情小説です。
書名は「さぶ」ですが、物語はさぶの親友である栄二を中心に進みます。
どんくさい「さぶ」を利発な「栄二」が助けながら、経師屋で修業している二人でした。しかし、ある日盗みの濡れ衣を着せられた栄二は、人足寄せ場に送られてしまいます。苦労の末に栄二を探し出したさぶをも追い返してしまうほどに、世をすねた目でしか見られなくなった栄二ですが、人足寄せ場でいろいろな人たちに出会うのです。
徹底したさぶの人の良さ、善意を主題とし、人はここまで優しくなれるものか、とどこか映画のコピーで使われそうな言葉がそのまま当てはまる物語です。その爽快な読後感は素晴らしいものがあります。
山本周五郎といえば新潮文庫だと思っていたのですが、2018年になり講談社文庫、角川文庫からも出版されていました。