多摩に生まれ、乱暴者として周囲の手を焼かせながらも、歳三の胸には熱い思いが煮えたぎっていた。「強くなりたい」。近藤や沖田と出会い、運命は大きく動き出していく。「鬼の副長」になるまでの成長を描いた上巻。(引用:Amazon内容紹介)
新選組の副長として恐るべき統率力を発揮した歳三だったが、新選組はやがて新時代の大きなうねりに飲み込まれていく。かつての仲間との別れ、戦いに次ぐ戦い、壮絶な最期。土方歳三の生き様を見事に書ききった下巻。(引用:Amazon内容紹介)
私がこれまで読んできた新選組の物語の中では一番通俗的な土方歳三像、と言えるかもしれません。新刊本で上下二巻、都合七百頁を超える分量でありながら、文章は平易で会話文も多く、歴史的事実の解釈でも作者の独自の解釈による展開北海道部分を除いてはあまりなく、深く考えないという点では読みやすい物語でした。
というのはよく言えばの話でしょうか。レビューを見ても、内容が無いだとか、薄いなどという言葉が見られます。まあ、好みは人それぞれなので、そう感じる人がいてもそれはそれで仕方が無いのかなと思います。個人的にはそれほどでもなく、活劇小説として読めばそれなりに面白い物語でした。
ただ、土方が北海道に渡ってからの話は別で、そこそこに面白く読みました。でも、私が土方歳三の北海道時代の話をあまり知らないということが一番大きいのかもしれません。土方の北海道での物語は北方謙三の『黒龍の柩』の中で少し触れられていたくらいでしょうか。あと、たしかNHKでのテレビドラマで五稜郭時代の土方のドラマがありました。このドラマは思いのほか楽しく見たものです。
そういう意味では、北海道時代の土方の物語をある程度詳しく知っている方はまた異なる印象をもたれることでしょう。
この土方の北海道時代については、富樫倫太郎氏は『箱館売ります』を始めとする『蝦夷血風録』シリーズなども書いておられ、本書の物語との重複を指摘している方もいらっしゃいました。