千坂道場の年若い門弟・荒川と石黒が稽古帰りに御家人風の武士に襲われた。命からがら逃げのびた石黒の話では、荒川は一刀のもとに斬り殺され、敵は「これは立ち合いだ」と言い残したという。その後も相次ぐ門弟への襲撃。狙いはいったい何なのか―?真相が明らかになった時、千坂道場に存亡の危機が訪れる。血湧き肉躍るシリーズ第六弾!(「BOOK」データベースより)
剣客春秋親子草シリーズの第六弾です。
千坂道場に、門弟の米山新次郎が仕える土屋庄佐衛門の二人の息子の屋敷内での剣術指南として屋敷に来てほしいという話がきた。
しかし、千坂道場の門弟に対し何者かが襲い掛かり、門弟の米山ほかが斬り殺されてしまう事件がおきてしまう。
かかる事態に、藤兵衛はかつての門弟で北町奉行所臨時廻り同心の坂口主水と弥八、佐太郎に、米山らに頼む。すると、土屋家の剣術指南役に絡んでの仕業らしいことが分かるのだった。
そのうちに彦四郎と里美、花の三人が華村からの帰りに襲われてしまう。
前作の『遺恨の剣』についての一文では、以前の物語とは「その構造を異にする」と書いて、このシリーズのマンネリ感を脱したかと思ったのですが、本書ではまた千坂道場を邪魔に思うほかの剣術道場の者が千坂道場の門弟らを襲うという、おなじみのパターンになっています。
痛快時代小説として面白くない、というつもりは全くないのですが、せっかくの面白いシリーズがもったいないと思ってしまう展開です。
結局、毎回同じ展開でマンネリ感を払しょくできないことに加え、彦四郎をはじめとする千坂道場の登場人物がシリーズ内での成長が見られないことなどもあって、どうしても辛めの感想になってしまうものと思われます。
このところ、鳥羽亮のほかの作品を読んでいないこともあり、鳥羽亮としての作品自体の変化は知らないでいます。もしかしたら鳥羽亮のほかの作品もそのある時期のまま止まっているのではないか、そういう気さえしてしまうのです。