出羽国島中藩の藩士を二人、新たな門弟として迎えた矢先、道場破りと思しき三人の武士に立ち合いを挑まれた彦四郎。勝負は持ち越しとなるが、ほどなく門弟の川田たちが暴漢に襲われる。なぜ川田たちは狙われたのか?島中藩士の入門と何か関係があるのか?心中穏やかでない彦四郎のもとへ最悪の報せが届く。人気シリーズ、手に汗握る第二弾! (「BOOK」データベースより)
剣客春秋親子草シリーズの第二弾です。
出羽国島中藩主嫡男の長太郎の剣術の指南役の選定に、千坂道場の彦四郎にも妻の里美と娘の花も共に参加してほしいとの話が起きます。気弱なところのある長太郎君であり、里美と花の稽古の様子を見ればその気になるかもしれないというのです。
ただ、島中藩にはもともと鬼斎流という流派があり、また一刀流でも三橋道場と関山道場にも声をかけているのだそうです。
そうした中、千坂道場では、この話が起きる以前から正体不明の連中による道場破りや、稽古帰りの弟子たちが襲われ、殺害されるという事件が起きていました。
これらの正体不明の相手に対し、籐兵衛や弥八とその手下の佐太郎という岡っ引きらの力も借りて、正体を探り出し、自らの反撃をしようとする彦四郎でした。
前巻では、女剣士に関わり陸奥国松浦藩のお家騒動に巻き込まれましたが、今回は出羽国島中藩での剣術指南役選びを原因とする争いです。
今回の話では、幼い花も争いに巻き込まれますが、幼い花の剣術修行の様子などもあって、心あたたまる様子も描かれています。また、しばらく剣術から遠ざかっている里美も再び剣をとったりもします。
ただ、全体としてみると、彦四郎の危難に際し藤兵衛が助けに現れ、弥八や佐太郎らも専門である探索などの面で手助けをし、それぞれに活躍するというこのシリーズの一つの形に収まっているようです。
鳥羽亮作品での一番の見せ所とも言える剣戟の場面も盛り沢山でありますが、それ以上のものではなく、可もなく不可もない、という作品です。