鳥羽 亮

剣客春秋シリーズ

イラスト1
Pocket


義父・藤兵衛から道場を譲り受けた千坂彦四郎。だが、妻の里美、愛娘・花のためにも、立派な道場主たらんとする責任感が、知らぬ間に精神的重圧となって彼にのしかかる。ある日、兄の敵討ちのため、陸奥国松浦藩からやってきた女剣士・小暮ちさと出逢ったことが、彦四郎の人生に影を落とす…。(「BOOK」データベースより)

本巻から、このシリーズも新しくなっています。登場人物は別に変わることもこともないのですが、ただこれまで千坂藤兵衛がメインであった物語が、藤兵衛の娘の里美の婿である彦四郎中心の物語になったというだけのことです。

その彦四郎がかつての里美にも似た一人の女剣士を助けます。名を木暮ちさというその女剣士を助けたことから彦四郎は松浦藩のお家騒動に巻き込まれることになり、義父の藤兵衛らの力を借りてこれを解決する、というありがちな流れではありました。

ありがちな話ではありましたが、彦四郎が女剣士ちさに淡い恋心を抱くというエピソードも組みこまれています。

そしてこの点について解説の細谷正光氏によると、「『剣客春秋シリーズ』は、彦四郎のビルディング・スロマンにもなっていたのであ」って、このシリーズも新しくなり、彦四郎も千坂道場の主となったからといって、成長譚としての役割が終わったわけではなく、未だ成長し続けることを意味していると書かれていました。

新しいシリーズとなっても、千坂藤兵衛、彦四郎、里美、そして岡っ引きの弥八などの登場人物はこれまでと同様に活躍するこのシリーズです。これからも読み続けようと思います。

[投稿日]2018年04月03日  [最終更新日]2018年4月3日
Pocket

おすすめの小説

侍を主人公とした痛快時代小説

剣客春秋シリーズ ( 鳥羽 亮 )
剣術道場主の千坂藤兵衛とその娘里美、その恋人彦四郎を中心に、親子、そして若者らの日常を描きながら物語は進んでいきます。
居眠り磐音江戸双紙シリーズ ( 佐伯泰英 )
佐伯泰英作品の中でも一番の人気シリーズで、平成の大ベストセラーだそうです。途中から物語の雰囲気が変わり、当初ほどの面白さはなくなりましたが、それでもなお面白い小説です。
風の市兵衛シリーズ ( 辻堂 魁 )
主人公が「渡り用人」というユニークな設定で、痛快と言うにふさわしい、とても読み易いシリーズです。
軍鶏侍シリーズ ( 野口 卓 )
デビュー作の軍鶏侍は、藤沢周平作品を思わせる作風で、非常に読みやすく、当初から高い評価を受けています。
口入屋用心棒シリーズ ( 鈴木 英治 )
浪々の身で妻を探す主人公の湯瀬直之進の生活を追いながら、シリーズの設定がどんどん変化していく、少々変わった物語です。ですが、鈴木節は健在で、この作家の種々のシリーズの中で一番面白いかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です