義父・藤兵衛から道場を譲り受けた千坂彦四郎。だが、妻の里美、愛娘・花のためにも、立派な道場主たらんとする責任感が、知らぬ間に精神的重圧となって彼にのしかかる。ある日、兄の敵討ちのため、陸奥国松浦藩からやってきた女剣士・小暮ちさと出逢ったことが、彦四郎の人生に影を落とす…。(「BOOK」データベースより)
本巻から、このシリーズも新しくなっています。登場人物は別に変わることもこともないのですが、ただこれまで千坂藤兵衛がメインであった物語が、藤兵衛の娘の里美の婿である彦四郎中心の物語になったというだけのことです。
その彦四郎がかつての里美にも似た一人の女剣士を助けます。名を木暮ちさというその女剣士を助けたことから彦四郎は松浦藩のお家騒動に巻き込まれることになり、義父の藤兵衛らの力を借りてこれを解決する、というありがちな流れではありました。
ありがちな話ではありましたが、彦四郎が女剣士ちさに淡い恋心を抱くというエピソードも組みこまれています。
そしてこの点について解説の細谷正光氏によると、「『剣客春秋シリーズ』は、彦四郎のビルディング・スロマンにもなっていたのであ」って、このシリーズも新しくなり、彦四郎も千坂道場の主となったからといって、成長譚としての役割が終わったわけではなく、未だ成長し続けることを意味していると書かれていました。
新しいシリーズとなっても、千坂藤兵衛、彦四郎、里美、そして岡っ引きの弥八などの登場人物はこれまでと同様に活躍するこのシリーズです。これからも読み続けようと思います。