団子屋の看板娘・おひのがかどわかされた。夫である桶屋の波津彦とともに姿を消してから十日。七緒は二人の探索を引き受ける。一方、北町奉行所同心・和倉信兵衛は、両目がくり抜かれた死体と対峙していた。かつての繁盛が嘘のように閑古鳥の鳴く団子屋。おひのの明るい呼び声は戻ってくるのか。文庫書き下ろし。シリーズ第二弾!(「BOOK」データベースより)
陽炎時雨 幻の剣シリーズの第二巻です。
主人公秋重七緒は、団子屋の「常葉屋」が、以前よりも活気が無くお客も減って、団子自体の味も落ちているように感じられた。店の者に聞くと、おひのという娘と夫の波津彦とが行方不明になっているという。
そこで七緒は行方不明の娘夫婦の探索を請け負うのだった。
本シリーズの第一作目の『歯のない男』では、その謎や筋立てに不自然さがあり、続刊では変わっていると期待していたのですが、残念ながら今ひとつでした。
例えば秋重七緒の探索の端緒が、その店の雰囲気が変わっていたことだけというのは少々安易に感じます。見知らぬ夫婦の探索のきっかけとしては単純過ぎるでしょう。
せっかく新しいシリーズとしてそれなりのキャラクターを設定してあるのに、ストーリーをもう少し練り上げてくれればと思わずに入れないのです。
この点は、この作家の『若殿八方破れシリーズ』と同様に、細かな設定は無視して単純に話を楽しむべき作品なのかもしれません。
それにしても、本シリーズは捕物帳的な物語であり、謎解きが主軸になっている物語ですから、やはり状況設定はもう少し緻密に練って欲しいと思うのです。
鈴木英治という作家の描きだす物語の面白さはまだまだこんなものではないと思うのですが、残念です。
ただ、本書が刊行されたのが2014年の4月ですから、もう4年以上も続編が書かれていません。それだけ人気を得ることがでいなかったということなのでしょう。