杉本 章子

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文藝春秋

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斎藤月岑は神田雉子町に居をかまえる、草創名主24家のひとつ、斎藤家の9代目である。祖父、父と3代にわたって著わした「江戸名所図会」は斎藤家の悲願の作であった。江戸最後の名主の目を通して江戸から東京に変わる時代相を描く表題作、「江戸繁昌記」の寺門静軒の生涯を描く「男の軌跡」を収める中篇集。(「BOOK」データベースより)

 

本書は中編「名主の裔」と、短編「男の軌跡」との二作品から構成されています。

 

「名主の裔」は、斎藤市佐衛門(月岑)という江戸最後の名主である実在した人物の眼を通して、幕末の黒船来航の頃から明治期に至るまでの当時の江戸の町の様子を描いた作品です。身勝手な幕府の役人の下で振りまわされる名主や、明治期になっても同様に新政府の役人の勝手なお達しに右往左往する名主たちの姿が描かれています。

江戸の町の町人地の支配は町奉行の下に三人の町年寄がいて、その下に『草創(くさわけ)名主』『古町(こちょう)名主』『平名主』それに『門前名主』と、町奉行支配下になった時期によって呼称が違い、また事実上の身分も異なっていたようです。

本編の主人公の神田雉子町に住んでいる斎藤市佐衛門は、徳川家康の時代からの名主である草創名主二十四家のひとつ斎藤家の九代目で、号を月岑(げっしん)と言い、「江戸名所図絵」「東都歳時記」「武江年表」などの著作を著している、実在した江戸最後の名主です。

 

 

本書が出版されたのが1989年であり、前に紹介した1988年出版の「東京新大橋雨中図」の次に発表された作品のようで、この両作品は雰囲気もよく似ていて、エンタテインメント性はあまりありません。近年の「お狂言師歌吉シリーズ」(2005年)「東京影同心」(2011年)の作風からすると別人のようです。

「男の軌跡」に至っては更に暗い話で、幕末に実在した儒学者、寺門静軒の物語です。仕官を願うもかなわず、結局、「江戸繁昌記」という江戸の風俗を記した本を出版するのです。

本書は著者のデビュー作だそうで、この作品だけを先に読んでいたら、多分以後はこの作家の作品は読まなかったでしょう。面白くないというのではなく、全体的な雰囲気の暗さが好みではないのです。

[投稿日]2015年04月12日  [最終更新日]2019年1月16日
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