雫井 脩介

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ミナト堂社長水岡はその息子裕太と共に何者かに誘拐されてしまうが、水岡のみが解放された。犯人は何故に水岡のみを簡単に開放してしまったのか。神奈川県警の巻島史彦警視は、この誘拐犯の捜査指揮を任され、再び陣頭指揮に立つことになった。

前作『犯人に告ぐ』を期待して読むといけません。私は前作を思いながら読んだので、つまりはハードルをかなり高くして本書を読んだので失望感のほうが高くなってしまいました。

本書は本書なりに面白い作品なのです。ただ、読み始めてしばらくは「振り込め詐欺」の様子が克明に描かれており、その間が私のような読み手には若干の間延び感を感じてしまう間でもありました。

また、前作は主人公である巻島史彦警視対犯人という図式があり、一方で警察内部での組織人としての巻島の在り方もまた一つの見どころでもありました。

本作ではそうした巻島と警察という組織との対立という図式はあまりありません。と同時に巻島と犯人という関係ももう一つなのです。そういう意味でも前作の構造の見事さが浮かび上がってきて、本作が普通の誘拐小説の変形としか感じられなくなっているのが残念です。もしかしたら、これが巻島の物語でなければまだ評価は高かったのかもしれません。

そうはいっても、巻島が捜査の指揮をとり、巻島と犯人との対立の図式がはっきりしてくる本書後半からは、かなりの面白さを感じながら読み進めることができました。それだけにハードルを高くし過ぎて読んだ前半が残念です。勿論、それは読み手たる私の問題なのですが。

誘拐をテーマにした小説といえば天藤真の『大誘拐』が有名です。「82歳の小柄な老婆が国家権力とマスコミを手玉に取り百億円を略取した痛快な大事件を描(ウィキペディア参照)」いたこの物語は、第32回日本推理作家協会賞を受賞し、北林谷栄や緒方拳を配して岡本喜八により映画化もされました。

それに 横山秀夫の『64(ロクヨン)』を挙げるべきでしょう。この作品は誘拐本体というよりは、誘拐事件に振り回される警察を描いた社会派推理小説の名作と言え、NHKテレビでのドラマ化に加え、佐藤浩市主演での映画化も為されています。

[投稿日]2016年10月21日  [最終更新日]2016年10月21日
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