札幌市内のアパートで、女性の変死体が発見された。遺体の女性は北海道警察本部生活安全部の水村朝美巡査と判明。容疑者となった交際相手は、同じ本部に所属する津久井巡査部長だった。やがて津久井に対する射殺命令がでてしまう。捜査から外された所轄署の佐伯警部補は、かつて、おとり捜査で組んだことのある津久井の潔白を証明するために有志たちとともに、極秘裡に捜査を始めたのだったが…。北海道道警を舞台に描く警察小説の金字塔、「うたう警官」の文庫化。(「BOOK」データベースより)
道警本部の婦人警官が被害者の殺人事件が発生し、津久井巡査部長が犯人と目されているらしく、その津久井とかつて仕事で組んだことのある佐伯を中心として、津久井の無実を晴らそうと仲間が動きまわります。折しも津久井は道警の不祥事について百条委員会に証人として出席する予定だったらしく、隠された事実を感じる佐伯達だったのです。
「笑う警官」というタイトルに惹かれ読んでみた本です。読んでみたら思いのほかに面白い。結構展開も速めで、テンポ良く読めました。
本書は、出版時は「うたう警官」というタイトルだったのですが、大森南朋主演で、漫才コンビ雨上がり決死隊の宮迫博之も出演して角川映画で映画化もされた折り、文庫化に伴い『笑う警官』と改題されたものです。ただ、映画化作品はあまり評判はよろしくなかったようです。
「笑う警官」といえば、若い頃読んだマルティン・ベックシリーズの「笑う警官」を思い出します。この本はスウェーデンの警察小説なのですが、当時はまっていたエド・マクベインの『87文書シリーズ』に触発されて読んだシリーズでした。ウォルター・マッソー主演で映画化もされ、かなり面白い映画だった記憶があります。
今回佐々木譲の『笑う警官』について調べたところ、「マルティン・ベックのような警察小説」と言われて書き始めたとあり、同じタイトルなのだからそれも当たり前かと、納得したものです。
でも、内容は全く違います。即ち、証人として道議会の百条委員会に出席する筈だった津久井を抹殺しようとする道警組織との対決、という構図です。この不祥事というのが本書内では「郡司事件」呼ばれている事件で、北海道警裏金事件や稲葉事件などの現実に起きた北海道警察の不祥事をもとにしているのです。この物語を第一作としてシリーズ化されるのですが、それほどに面白い小説だということでしょう。