佐々木 譲

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新潮社

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昭和二十三年、警察官として歩みはじめた安城清二は、やがて谷中の天王寺駐在所に配属される。人情味溢れる駐在だった。だが五重の塔が火災に遭った夜、謎の死を遂げる。その長男・安城民雄も父の跡を追うように警察学校へ。だが卒業後、その血を見込まれ、過酷な任務を与えられる。大学生として新左翼運動に潜りこめ、というのだ。三代の警官の魂を描く、空前絶後の大河ミステリ。(上巻 : 「BOOK」データベースより)

安城民雄は、駐在として谷中へと還ってきた。心の傷は未だ癒えてはいない。だが清二が愛した町で力を尽くした。ある日、立てこもり事件が発生し、民雄はたったひとりで現場に乗り込んだのだが―。そして、安城和也もまた、祖父、父と同じ道を選んだ。警視庁捜査四課の一員として組織暴力と対峙する彼は、密命を帯びていた。ミステリ史にその名を刻む警察小説、堂々たる完結篇。(上巻 : 「BOOK」データベースより)

 

親子三代にわたる警察官の姿を描き出す、大河警察小説で、2007年に日本冒険小説協会大賞を受賞し、2008年版の「このミステリーがすごい!」で第一位を獲得しています。

前評判通りの読みごたえのある小説で、入院先のベッドで他に何もすることがなく、殆ど丸一日、朝六時から夜十時の消灯時間まで食事や診察以外の十時間近くで文庫本上下二巻、千頁弱を一気に読み終えました。

警察小説の第一人者として挙げられることの多い佐々木譲という作家さんですが、その中でも本書は代表作といえるのではないでしょうか。それくらい骨太の読みごたえのあるミステリー小説です。

 

本書は安生清二民雄和也という親子三代の警察官の姿を描くことで、戦後すぐの昭和二十三年からおよそ六十年の間の警察の歴史を描き出してあります。

それはまた、警察官としての夫婦の物語でもあり、また駐在員の家族の物語としての要素も強く持った作品です。

清二、、民雄、和也というそれぞれの恋人、夫婦の抱える問題は勿論、子供から見た父親像などの父親と子供の関係も濃密に描き出してあります。

清二が万引き少年の父親に対し息子の非行は「あんたのせいだよ。」と叱りつける場面など、確かに若干出来すぎとの印象も持ちましたが、それでもなお子供にとって親の背中は大きいものだと感じたものです。

 

本書は同時に昭和、平成の事件史でもあると言えます。それだけの世相を反映した物語なのです。

警察の職務という視点から見ると、清二の場面では警察学校と駐在所勤務、民雄の場面では公安警察、和也の場面では警務と第四課つまりは警視庁内部の警察と暴力団対策について描かれていると、大まかにはそう言えます。

 

歴史的には、戦後の浮浪者のたむろする上野での取り締まりから、昭和四十年前後の学生運動の高まりとともにあった新左翼運動、そして赤軍派に代表される過激派問題、そして多分ですが警察の裏金問題などにみられる警察不祥事などが取り上げられていると思えるのです。

その中でも、全体を貫く視点として、駐在所という本庁の指揮命令系統の中にありながらも独自の判断が要求される駐在さんの仕事を重視しているようです。

とくに清二が気にかけていた二件の殺人事件と自殺として処理された清二の死にまつわる謎の解明が、民雄、そして和也と三代にわたって次第に明らかにされていく様が、ミステリーとしての醍醐味を満喫させてくれます。

 

こうして警察の多様な職務についての描写を個別にみると、様々な作品が思い出されます。

まず警察学校に関しては 長岡弘樹の『教場』という作品があります。

 

 

また駐在所勤務といえば、本書の作者佐々木譲の『制服捜査』がありますし、 笹本稜平にも『尾根を渡る風』という作品を含む『駐在刑事シリーズ』があります。

 

 

公安警察では 麻生幾の『ZERO』を始めとする一連の作品群があり、和也の加賀谷仁を見ると 柚月裕子の『孤狼の血』に登場する大上刑事を思い出します。

 

 

ほかにも裏金問題を扱った作品など、挙げ始めればきりがありません。

 

ちなみに、本書は江口洋介、吉岡秀隆、伊藤英明というキャストでテレビドラマ化されており、2009年2月にテレビ朝日の開局50周年記念番組の一つとして放映されています。

わたしはこのドラマを先に見ていてその壮大さに触れていたので、原作を今日まで読んでいませんでした。

しかし、もっと早くに読むべきだったと思っています。

[投稿日]2020年01月27日  [最終更新日]2020年1月27日
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