ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ(完了)
- ビブリア古書堂の事件手帖 〜栞子さんと奇妙な客人たち〜
- ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜
- ビブリア古書堂の事件手帖3 〜栞子さんと消えない絆〜
- ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜
- ビブリア古書堂の事件手帖5 〜栞子さんと繋がりの時〜
- ビブリア古書堂の事件手帖6 〜栞子さんと巡るさだめ〜
- ビブリア古書堂の事件手帖7 〜栞子さんと果てない舞台〜
北鎌倉にある古書店「ビブリア古書堂」の主である篠川栞子と、アルバイト社員である五浦大輔を中心に、古書にまつわる謎を解き明かしていくミステリーです。
本シリーズは、各巻ごとにと一冊から数冊の古書が取り上げられて、その古書についての豆知識がふんだんにちりばめられ、その古書に関する謎が提示されます。
普段は引っ込み思案で、人見知りでありながら、こと書物に関する事柄だけは人が変わったように流暢にうんちくを語り、謎を解いていくのが栞子という人物でした。
そこに、幼い頃のトラウマから体質として長い時間は書物を読めないという五浦大輔が、栞子に対する隠しきれない恋心を抱きながらも栞子を補佐していく姿が、ユーモアを交えて描かれています。
各巻で取り上げられている古書は様々なものがありますが、第一巻だけ見ても、夏目漱石『漱石全集・新書版』、小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』、ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』、太宰治『晩年』(砂子屋書房)などと普通は手の届かないような作品ばかりです。
それでも軽く読めて、謎解きも面白く、作者の古書に対する愛情も垣間見え、物語の内容とともに微笑ましく読めるシリーズとなっています。
また、連作の短編であったり、一冊丸ごと長編であったりと、いろいろな形態の物語が収められていて、また古書にまつわる謎ときのほかに、栞子の家族、とくに母親との確執や、母親の絡む謎も用意されていて、様々な楽しみ方が出来るようにもなっています。
このシリーズは大人向けのライトノベルを出版しているメディアワークス文庫の描き下ろし作品として出版され、シリーズ累計の発行部数は600万部をこえる大ベストセラー作品となっていて、2012年には本屋大賞にもノミネートされています。
ちなみに、この年の本屋大賞受賞作品は三浦しをんの『舟を編む』でした。
また、本『ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ』は、テレビドラマ、映画、そしてコミックと各メディア化もされています。
テレビドラマとしては、剛力彩芽主演でフジテレビ系列で放映されていて、また、篠川栞子を黒木華、五浦大輔を野村周平というダブル主演で映画化され、2018年11月1日に公開されることが決定しました。
詳しくは、映画の公式サイト
を参照してください。
アニメ版も作成されることになっています。
コミックとしては、角川コミックス・エース版(全六巻)とアフタヌーンKC版(全三巻)とが出ています。
書籍をテーマにした作品としては、『桜風堂ものがたり』や『本を守ろうとする猫の話』など、著者の本に対する愛情があふれ出ているような作品があり、本好きの読み手としては非常に嬉しい作品もあります。
『桜風堂ものがたり』は、村山早紀の作品で、2017年本屋大賞にノミネートされています。ある日主人公が勤める書店で起きた万引き騒動に巻き込まれ、その書店をやめざるを得なくなった書店員の、一冊の本をめぐり繰り広げられる人のつながりのやさしさを描く心あたたまる物語です。
また『本を守ろうとする猫の話』は、ベストセラーである『神様のカルテシリーズ』を書いた夏川草介の作品です。
突然祖父を亡くし、祖父が営んでいた古書店を手放さざるを得なくなっていた主人公ですが、その前に一匹の人間の言葉を話すトラネコが現れます。そのトラネコは、主人公に「書籍」を救う手伝いをして欲しいというのでした。
共に著者の本に対する愛情が満ちていている作品です。本書『ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ』は、古書を対象とした推理小説であり、謎解きがメインの物語ではありますが、同じように書籍に対する絵以上が透けて見える作品でもあるのです。