福岡市香椎の海岸で男女二人の死体が発見された。博多の刑事鳥飼と警視庁の刑事三原は犯人と目星をつけた男を追う。しかし、その男にははっきりとしたアリバイがあった。
あまりにも有名な東京駅での空白の4分間が語られます。この作品が長編第一作なのですが、読者から絶大な支持を得ました。
政界の汚職事件に絡む動機を設定した松本清張は、以後社会派と称されるようになり、同様にリアリティーを追求した推理小説を次々と出版することになるのです。
いわゆる時刻表トリックの名作で改めて紹介するまでもないとは思いますが、それまでのトリック重視の物語から、トリックも十分に練り挙げられながら、尚且つ殺害の動機をも、実社会に根差した現実性を十分に持った汚職がらみの事件に仕立て上げ、更に全体の構成をも重厚に仕上げていくその力量は、一時代を作り上げた松本清張という作家ならではのものだと思います。
急行列車での移動が当たり前で、新幹線などなかった時代の物語です。その時代背景を読みとることもまた面白いのではないでしょうか。
今では推理小説の古典と言うべき一冊です。