『警視庁心理捜査官 KEEP OUT 〈新装版〉』とは
本書『警視庁心理捜査官 KEEP OUT 〈新装版〉』は『警視庁心理捜査官シリーズ』の第二弾で、2010年7月に徳間書店から文庫本書下ろしで出版され、2021年6月に新装版が出版された短編の警察小説集です。
全部で九話の話が収められていますが、どの話もなかなかに読みがいのある作品でした。
『警視庁心理捜査官 KEEP OUT 〈新装版〉』の簡単なあらすじ
あんた、なんで所轄なんだよ?心理なんとか捜査官の資格もってんだろ、犯罪捜査支援室あたりが適当なんじゃねえのかよ…多摩中央署に強行犯係主任として異動(=左遷)、本庁よりも更に男優位組織でアクの強い刑事達に揉まれる吉村爽子。ローカルな事件の地道な捜査に追われる日々の中で、その大胆な“筋読み”が次第に一目置かれるようになる。「心理応用特別捜査官」吉村爽子の活躍!(「BOOK」データベースより)
叩いてもゆすっても夫が目覚めず、呼吸脈拍もないと妻から通報が入った。遺体は自然な感じで横たわっていたが、その右手は「殺しの手」をしていた。しかし、妻は遺体を動かしてはいないと言うのだった。
長男の信彦が誘拐されたとの連絡が入った。しかし、いつもと異なるのは犯人からの電話は、警察への連絡は好きにしろと言うものだったのだ。
一人の女性が亡くなった事件性が不明の現場で、前巻の連続殺人事件で爽子の意見をことごとく否定してきた殺人犯捜査第三係長の大貫裕也警部らと事件性の有無についての判断を争うことになる。
性犯罪の被疑者を逮捕したものの、自白に伴う証拠品が見つからない。そのことを嗅ぎつけた被疑者は息を吹き返して否認し始めるのだった。
強面で頑丈な体を持っていた警官が、相棒が起きてくる前に警邏に出たところを襲われる事件が起きたが、堀田係長もまた、自分が仮眠中に同僚が襲われたという過去を持っていたのだ。
元夫が、今の内縁の夫に怪我を負わせるという事件が発生した。ところが、女は幼い娘を一人留守番を指せ、内縁の夫に付き添いに行くと言い出すのだった。
吉住智佳子は、彼女の店の店員の男女と酒を飲んでいたが、吉住智佳子がコンビニまで出かけたすきに、男が同僚の女を襲ったという。二人とも酩酊状態で、その供述も要領を得ないものだった。
妻が首を吊ったと110番通報があり早速駆け付けた爽子らだったが、その夫というのは伊原と深い因縁のある桑原興一という人物だった。
爽子は、更級小春という六歳くらいの女の子から、飼っていたシーズー犬がいなくなったという相談を受け、ペットの行方不明が頻発していることに気が付くのだった。
『警視庁心理捜査官 KEEP OUT 〈新装版〉』の感想
本書『警視庁心理捜査官 KEEP OUT 〈新装版〉』は『警視庁心理捜査官シリーズ』の第二弾で、全部で328頁というそう長くもない頁数でありながら九話の物語が収められている作品集です。
前巻の『警視庁心理捜査官』でそれなりの活躍を見せていたはずの主人公吉村爽子(よしむらさわこ)ですが、本巻においては、前話での「無謀な単独捜査」の結果、第九方面の多摩中央署刑事組織犯罪対策課強行犯係に「放逐」されています。
そして、何とも風采のあがらない堀田係長のもと、セクハラ感満載の伊原巡査部長、その相棒の三森、盗犯から強行犯へ署内異動したばかりの若い女性警官である支倉由衣、民間からの転職組の高井、いつも表情が変わらない佐々木などの面々と共に勤務しているのです。
ただ、もともとが自分の気持ちをうまく表すことができない爽子であり、新しい職場でもなかなか溶け込むことができずにいます。
でも日時を経るとともに、次第に打ち解けてゆく爽子の姿もあって、そういう意味でも爽子の成長物語としての面白さも兼ね備えています。
さらに言えば、そこにこのシリーズのもう一人の主人公と言ってもいいだろう柳原明日香警部の姿が見えるのも魅力の一端を担っています。
上記のようにそれなりに面白く読んだ本書ですが、ただ、心理捜査官としての爽子の活躍が見ることができるかと言えばその点には疑問符が付きます。
爽子の推理により事件が解決していく様子はいいのですが、その推理が心理捜査官としてのプロファイリングに基づくものかと言えばそうとも言い切れないように思えるのです。
普通の刑事の「筋読み」でも同じ結論に辿り着くとも思え、心理捜査官としての吉村爽子の活躍の話ではないのです。
そして、その推理にしても若干強引な気がしないでもありません。ご都合主義とまでは言いませんが、若干無理だろうという思いも沸いたのです。
また、「第五話 ニューナンブ」は、少々話として出来すぎという印象があり、「第七話 相勤者」では佐々木のエピソードが述べられていますが、すぐに首肯できるものでもありませんでした。
とはいえ、先に述べたように、物語として十分に面白く読むことができ、続編も読もうという気になった作品集でした。