本書『国境』は、『疫病神シリーズ』の第二巻目の長編小説です。
第一巻での調子のよいコンビが今度はあの北朝鮮を舞台とし、エンターテイメント小説としての面白さはさらに拍車がかかっています。
直木賞受賞作『破門』をしのぐシリーズ最高傑作!
「疫病神コンビ」こと二宮と桑原は、詐欺師を追って北朝鮮に潜入する。だが彼の地は想像を絶する世界だった。新直木賞作家の代表作!
「疫病神」コンビこと、建設コンサルタントの二宮と二蝶会幹部の桑原は北朝鮮に飛んだ。二宮は重機の輸出で、桑原は組の若頭がカジノ建設の投資話でそれぞれ詐欺に遭い、企んだ男を追ってのことだった。平壌に降り立ったふたりだが、そこには想像以上に厳しい現実と監視が待っていた。シリーズ最高傑作の呼び声高い超大作!
衝撃だった。ここまで悲惨な状況だとは思ってもみなかった。それでもなお、この国は“地上の楽園”なのか。建設コンサルタント業の二宮と暴力団幹部・桑原の「疫病神コンビ」が、詐欺師を追って潜入した国・北朝鮮で目にしたものは、まるで想像を絶する世界だった―。読み出したら止まらないサスペンス超大作。「疫病神」シリーズ屈指の傑作。盟友の故・藤原伊織氏の解説を再録。( 上巻:「BOOK」データベースより)
二宮と桑原のふたりは、自分たちを嵌めた詐欺師を追って、中国との国境から再び北朝鮮に密入国を企てる。北朝鮮の凄まじい現実と極寒の中、詐欺師を追いこんだふたりだったが、脱出には更なる困難が待っていた―。「疫病神」コンビは、本当の黒幕にたどり着くことができるのか!?圧倒的スケールの傑作。( 下巻:「BOOK」データベースより)
建設コンサルタント業の二宮は自分が仕事の仲介をした相手が詐欺師に引っ掛かった。また暴力団幹部の桑原は自分の兄貴分が、詐欺師の口車に乗せられてしまう。
二人はそのしりぬぐいのために、詐欺師を追いかけて北朝鮮まで行くことになった。例のよって、このコンビが騒動を巻き起こすのだった。
本書『国境』ではその半分以上(?)が北朝鮮の国内が舞台になっています。
北朝鮮、もしくは北朝鮮を思わせる国の人物が主要人物になっている小説は読んだことがあるのですが、北朝鮮国内そのものが舞台になっている小説を他には知りません。
著者が実際に北朝鮮に行ったことがあるかは不明ですが、描写は実に克明です。
巻末をみると六十冊は軽く超えていると思われる資料が記載されています。もしかするとこの資料の読みこみだけで北朝鮮を描写されたのではないかとも思えます。
この北朝鮮を舞台に、金の亡者でもあるヤクザの桑原と二宮の二人が珍道中を繰り広げます。とは言っても、単なるコメディとは違い、シリアスでどこか侠気(おとこぎ)に満ちており、ストーリーに引き込まれてしまいます。
私達がその内実を殆ど知らない北朝鮮という国では、観光客には必ず案内員がつき、その指導に従わなければならないそうです。とはいえ物を言うのはやはり「金」であるらしく、北朝鮮の警察組織にあたる社会安全員さえも金で動きます。
ちなみに以前は社会安全部と呼ばれていた「社会安全員」は、2000年4月に人民保安省、2010年に人民保安部と改称され、国防委員会の直属機関となり、現在(2015年)に至っているそうです。
そのような、自由で平和な国日本の常識が通用する筈もない、少しの違反でも命取りになりかねない彼の国が舞台でありながら、桑原はあいも変わらずにマイペースであり、その桑原に振り回されているのがこれまた同様の二宮です。
著者である黒川博行氏の言葉によると、この『疫病神シリーズ』シリーズは大ヒット映画『悪名』(今東光原作、1961年)にヒントを得ているそうです。
勝新太郎と田宮二郎のヤクザと堅気のコンビが活躍するこの映画は、私が学生の頃にテレビで放映されているのを見た覚えがあります。いかにも勝新らしい痛快極まりない映画で、言われてみればこのコンビだと納得です。( zakzak : 参照 )
また、作者の黒川博行氏は「読みやすさ」を意識しているといわれます。
それは「キャラクター」のことであり、「あとは会話やアクションのテンポ」を重視していて、それは「ハリウッドのエンターテインメントが勉強になってい」るそうです。
まさに黒川氏が言われる通りの、読者にとってテンポ良く読めて物語世界に違和感なく入っていける物語が出来上がっているのです。
なお、上記『国境』の文庫本リンク画像は Amazon にリンクしていますが、本書は「講談社文庫」からも文庫本が出ています。下のリンク画像がそうです。