「このまま年だけ重ねて、どうなさるおつもりですか」付添い屋稼業でその日暮らしを続ける浪人秋月六平太の行く末を案じる人間は、少なくない。一年前に姿を消した情婦、音羽の髪結いおりきは海を望む神奈川宿にいると知れたのだが、六平太の腰は重かった。一方、伝助店の住人で下馬売りの太助の母親おていが失踪、二日後箱崎の川岸で死骸が見つかった。おていはこのところ他人の家に入り込んだり、店の物を盗んだりするような不行状をみせ、太助は手を焼いていた。おてい殺しを巡って奔走する六平太の前に、史上最強の敵が現れる。日本一の王道時代劇、第三部完結!(「BOOK」データベースより)
「第一話 冬の花」
六平太と七年以上もなじんだ髪結いのおりきが音羽から姿を消して一年。かつておりきが可愛がっていた女郎の命日に、墓前には花が供えられていた。花を供えたのは、旅の男だったという。
「第二話 隣人」
浅草の海苔問屋「内丸屋」の主人高兵衛は、所有している阿部川町の長屋から店子を追い出そうとしていた。長屋の住人から報復を恐れた高兵衛は、六平太に身辺警護を依頼する。立ち退きを急ぐ高兵衛にとって、煙たい侍が長屋にはいた。
「第三話 雪月夜」
付添い屋とは名ばかり、なんでも屋として流される六平太の行く末を案じる人間は少なくない。行きつけの音羽の料理屋「吾作」では、料理人の菊次と、看板娘八重の仲がぎくしゃくしていた。六平太は、おりきが神奈川宿で旅籠の女中をしていることを知る。
「第四話 おりき」
伝助店の住人、下馬売りの太助の母親おていが失踪し、二日後箱崎の川岸で死骸が見つかった。おていは一年ほど前から他人の家に入り込んだり、店で物を盗んで居直ったりするようになり、その行状に太助は手を焼いていたという。一方で、六平太はおりきに会いに行く決心ができずにいた。(「内容紹介」より)
付添い屋六平太シリーズの第十弾、第三部完結となる長編の時代小説です。
今回の六平太では、行方不明になったおりきについて思いまどう六平太の姿が全編を貫いて描かれています。
本シリーズは、通常のヒーローが中心となって活躍する痛快活劇小説とは少し異なり、シリーズを通した「敵」は存在せず、六平太と彼を取り巻く市井の人々の日常が描かれています。初期の磐根シリーズがそうであったように、人情物語の側面が強い物語です。
本書はシリーズも十作目となり、第三部も完結と銘打ってあります。
行方不明であったおりきの消息もわかり、六平太もかねてから話のあった師範代を任せたいという話もあって、第四部となる次巻からは六平太もそれなりの落ち着きを見せているのでしょうか。
そのとき、おりきとの仲はどうなっているものなのか、今後の展開が気になるところです。