『スリジエセンター1991』とは
本書『スリジエセンター1991』は『バブル三部作シリーズ』の第三弾で、2012年10月に講談社から刊行され、2018年3月に講談社文庫から464頁の文庫として出版された、長編の医療小説です。
『スリジエセンター1991』の簡単なあらすじ
世界的天才外科医・天城雪彦。手術を受けたいなら全財産の半分を差し出せと言い放ち顰蹙も買うが、その手技は敵対する医師をも魅了する。東城大学医学部で部下の世良とともにハートセンターの設立を目指す天城の前に立ちはだかる様々な壁。医療の「革命」を巡るメディカル・エンターテインメントの最高峰!(「BOOK」データベースより)
スリジエ・ハートセンター設立を目指す天城雪彦は東城大での公開手術を目前に控えていた。
しかし、天城に反発する高階の工作により公開手術の患者が手術を断ってきたため、新たな患者に対し無料で公開手術を行うことになる。
天城はまた東京での国際学会でも公開手術を行うことになっていたが、そこでも手術スタッフが入れ替えられてしまうのだった。不慣れなスタッフのもと公開手術が行われるが、予想外の事態が起こる。
一方、その頃桜宮では城東デパート火災が起き、東城大病院は速見のもと何とかその修羅場を乗り越えようとしていた。
『スリジエセンター1991』の感想
本書『スリジエセンター1991』は、痛快小説のような面白さを備えた長編の医療小説です。
とにかく面白い小説の要素の殆どを備えている作品だと感じました。
終盤の東京での公開手術における鏡部長や天城の行動は『ジェネラル・ルージュの凱旋』での速水の活躍のように強力なリーダーでありヒーローなのです。読み手の心を掴んで離しません。
勿論、この場面に至るまでの各登場人物の行動などがあっての話なので、この場面だけを取り上げても意味は無いのでしょうが、それほどに惹きつけられたのです。
佐伯教授や黒崎助教授の思惑と高階講師の駆け引きや、榊総看護婦長や藤原婦長などの看護師陣も顔を見せ、更には『ジェネラル・ルージュの凱旋』で見せた速水の活躍の一旦の披露など、海堂ワールドにはまった人にとっては総仕上げ(と言うのは早いのでしょうが)的な展開が待っているのです。
その内容に応じたテンポの良い文章も読みやすく、物語の世界に入り易くしているのではないでしょうか。
今回、世良雅志は医局長になったりとそれなりに顔を見せてはいながらも、その実、語り役に徹しているのですが、代わりに思いがけない結末の幕引きという役割を負わされています。
この結末にはかなり異論もあるかと思いながら読みました。是非実際に読んでどう思うかを聞きたいものです。