『武蔵(一)』とは
本書『武蔵(一)』は『武蔵シリーズ』の第一弾で、2011年9月に徳間書店から419頁の単行本として出版された、長編の時代小説です。
『武蔵(一)』の簡単なあらすじ
若き日の武蔵こと弁之助、十一歳。二刀流剣術の完成を目指し、鍛錬を重ねる毎日だ。ある日、不意の衝動から野犬を打ち殺す。拡がる血溜まり。えも言われぬ光輝に包まれる。高揚し、充足した心持ちだ。「命とは、光か」だがすぐに首を左右に振る「わからん」。捉えようとすれば逃れる。剣術の真髄は遠い。その懊悩の一方で、弁之助は強烈な性の覚醒に乱される。薙刀を操る美貌の美禰、さらに義姉のおぎん…欲望のまま女体を貪るさなか、彼方に武が閃く。剣豪の青年期をかつてない視点で描く傑作大河小説。(「BOOK」データベースより)
『武蔵(一)』について
本書『武蔵(一)』は『武蔵シリーズ』の第一弾ですが、今までの武蔵像とはまったく異なる武蔵を描く、長編の時代小説です。
十一歳の弁之助は内にたぎる力を持て余していましたが、神官の娘美禰と薙刀での稽古で叩き伏せられてしまいます。
義姉のおぎんにより性の手ほどきをうけた弁之助でしたが、美禰とも契りを交わすのです。
その後、豪族の息子の然茂ノ介という男と知り合い、山賊退治へと出かけることとなるのでした。
この作家の『よろづ情ノ字薬種控』という作品と同様に、本書もとにかく濡れ場が多い作品です。
野人として描かれた武蔵が女を抱きまくる、という話は、むかし漫画で読んだ記憶がありますが、作者は誰だったか、今でははっきりとは覚えていません。こんなに女にもてる武蔵はその作品くらいではないでしょうか。
あふれんばかりのエネルギーを持て余している武蔵は、剣の稽古だけではそのエネルギーを消費しきれないでいるのでしょう。
武蔵と言えばまず挙げられるのは吉川英治の描く『宮本武蔵』(新潮文庫 全八巻)ですが、そこで描かれる武蔵像とは、全く異なります。Kindle版では「全8巻合本完全版」もあります。
ちなみに、吉川英治版の武蔵を原作とする”井上雄彦”』の武蔵も独自の解釈を施していましたが、ストイックさにおいては吉川版武蔵と同じと言えるでしょう。
しかし、本書の持つエネルギーは主人公を超えるものがあります。まだまだ始まったばかりのこの物語が今後どのように展開してくのか、非常に楽しみでもあります。しばらくは追いかけてみたいと思います。
