深町 秋生

イラスト1
Pocket

新刊書

光文社

写真は Amazon にリンクしています。

楽天Booksは 探偵は女手ひとつ [ 深町秋生 ] へ。


過疎にあえぐ地方都市ならではの事件、クールでタフな女探偵。これが現代日本だ!(「BOOK」データベースより)

椎名留美という女性を主人公とする、六編からなる連作短編小説集です。ハードボイルドミステリーと言うべきなのかもしれません。

本書の魅力は主人公椎名留美のキャラクターに尽きると言っても過言ではないと思います。本書全編で山形弁での会話が弾み、一見のどかな雰囲気を醸し出しています。

主人公椎名留美に関して明らかになっている事情は、一人娘がいるシングルマザーであり、刑事であった過去を持ち、今は探偵業を開業しているもののその実態は便利屋と化している、ことくらいでしょうか。

性格は向こう見ずであって、必要となれば暴力団の事務所であろうと乗り込んでいくだけの度胸をも持っています。とはいえ、そのような際には、逸平という元不良や個人的な警察との繋がりを利用した保険をかけておくことも忘れない慎重さも持ちあわせているのです。

こうしたキャラクターの主人公が、あるいは警察署長の依頼でさくらんぼ窃盗の犯人を追いかけ(第一話「紅い宝石」)、あるいは奥州義誠会という暴力団の幹部からのさらわれたデリヘル嬢を探して欲しいという依頼を受け(第三話「白い崩壊」)、また元クラブのママである一人の老婆の頼みも引き受けています(第四話「青い育成」)。

そして、彼女を助ける人物として東根警察署の署長の有木や(第一話「紅い宝石」)、以後の話の中で留美のボディーガード的な位置を占めることになる元不良の逸平(第二話「昏い追跡」)、裏社会への繋がりを手助けする存在となる暴力団の幹部石上研などの多彩なキャラクターが登場しています。

また、彼女が関わる事件も上記のさくらんぼ窃盗やデリヘル嬢捜索などの他、第二話のスーパーの保安員として万引き犯の実体、第五話「黒い夜会」でのホスト社会の裏事情、第六話「苦い制裁」でのストーカー事件の実態などと、裏社会の闇に連なる場合が多いのです。


結局は、彼女の仕事もそこで取りこまれてつつある人たちの救済という意味合いをも持つことになるのです。こうして本書は 東直己の『探偵・畝原シリーズ』などを思い起こさせる、ローカルなハードボイルドとして仕上がっています。ただ、本書はこのシリーズのようには重くはなく、もっと読みやすい物語となっています。

また、常に社会的なテーマを抱えながらも読みやすいハードボイルドタッチの物語としては、 石田衣良の『池袋ウエストゲートパークシリーズ』があります。主人公は池袋のトラブルシューターであるタカシという男ですが、池袋のカラーギャングのキングと呼ばれるタカシと共にトピカルなテーマを解決していく、読みやすい物語です。

ただ、本書『探偵は女手ひとつ』に比べると、『池袋ウエストゲートパークシリーズ』は舞台背景だけではなく、主人公自身のもつ雰囲気もかなりスマートであり、本書のローカルな印象とは異なります。

『探偵は女手ひとつ』は、2017年11月現在ではまだ続編は出ていませんが、このキャラクターは是非また読みたいと思うキャラクタ―であり、続編を期待したい一冊でもありました。

[投稿日]2017年12月08日  [最終更新日]2017年12月8日
Pocket

おすすめの小説

おすすめのハードボイルド小説(国内)

ハードボイルドという括りの中でも警察官や探偵が主人公の作品を集めてみました。どの作品も第一級の冒険小説です。
ブラディ・ドール シリーズ ( 北方 謙三 )
現代のハードボイルド小説の代表と言える作品です。とある港町N市を舞台に、酒場「ブラディ・ドール」のオーナー川中良一をめぐり、キドニーと呼ばれる弁護士の宇野や、その他ピアニスト、画家、医者、殺し屋などの男たちが各巻毎に登場し、語り部となり、物語が展開していきます。
飢えて狼 ( 志水辰夫 )
本作品も現代ハードボイルド小説の代表と言える作品でしょう。
テロリストのパラソル ( 藤原伊織 )
世に潜みつつアルコールに溺れる日々を送る主人公が自らの過去に立ち向かうその筋立てが、多分緻密に計算されたされたであろう伏線とせりふ回しとでテンポよく進みます。適度に緊張感を持って展開する物語は、会話の巧みさとも相まって読み手を飽きさせません。
ススキノ探偵シリーズ ( 東 直己 )
札幌はススキノを舞台に探偵である饒舌な「俺」が活躍するハードボイルド作品です。大泉洋主演で映画化されました。
廃墟に乞う ( 佐々木 譲 )
著者によると、矢作俊彦の小説にある「二村永爾シリーズ」にならって「プライベート・アイ(私立探偵)」小説を書こうと思い執筆した作品で、第142回直木賞を受賞しています。休職中の警官が、個人として様々な事件の裏を探ります。

関連リンク

『探偵は女手ひとつ』 山形在住アラフォー元刑事の活躍
日本の私立探偵小説の舞台は大半が東京。地方の探偵ものも、札幌や大阪、福岡等大都市中心だが、本書の主要舞台は山形市。山形は県庁所在地だし、小さな町では決してないが、隣県の仙台に比べるとやはり小規模な地方都市だ。本書はまぎれもない地方都市探偵ものなのである。
深町秋生さん最新作! クールなシングルマザー探偵を生み出した舞台裏とは?
深町秋生さん最新作! クールなシングルマザー探偵を生み出した舞台裏とは?【「ダ・ヴィンチはなにやってんだ、この野郎」というので取材してみた】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です