『壊れる心 警視庁犯罪被害者支援課』とは
本書『壊れる心 警視庁犯罪被害者支援課』は『警視庁犯罪被害者支援課シリーズ』の第一弾で、2014年8月に講談社文庫から512頁の文庫書下ろしとして出版された、長編の警察小説です。
現実には存在しない、しかし必要性はある「警視庁犯罪被害者支援課」という組織を舞台にした、とてもリアリティに富んだ警察小説であり、キャラクターも立っていてとても面白く読んだ作品でした。
『壊れる心 警視庁犯罪被害者支援課』の簡単なあらすじ
私は今、刑事ではない。被害者の心に寄り添い、傷が癒えるのを助ける。正解も終わりもない仕事。だが、私だからこそしなければならない仕事ー。月曜日の朝、通学児童の列に暴走車が突っこんだ。死傷者多数、残された家族たち。犯人確保もつかのま、事件は思いもかけない様相を見せ始める。(「BOOK」データベースより)
『壊れる心 』の感想
本書『壊れる心 警視庁犯罪被害者支援課』は『警視庁犯罪被害者支援課シリーズ』の第一弾で、現実には存在しない「警視庁犯罪被害者支援課」という組織を舞台にした警察小説です。
いかにもこの作者の作品らしく緻密な書き込みが目立つ、リアリティに富み、またキャラクターも存在感があって、とても面白く読んだ作品でした。
そもそも、本『警視庁犯罪被害者支援課シリーズ』は、元警視庁捜査一課に属していた村野秋生という犯罪被害者支援課員を主人公とする警察小説シリーズです。
この「支援課」には、元捜査一課管理官だった課長の本橋怜治や係長の芦田浩輔、村野の学生時代からの友人で力強い同僚である松木優里、それに支援課の地雷になるかもしれない長住光太郎という支援課員もいます。
そして、主役の村野の相方でもあり、これから支援課要員として育てていこうとしている江東署の初期支援員である安藤梓もいます。
本シリーズの村野を始めとする登場人物は、本シリーズの次シーズンにあたる『警視庁総合支援課』でも再度登場してきます。
また、本書の「犯罪被害者支援課」という組織は、犯罪被害者の支援を目的として設けられた組織です。
犯罪を犯した者の権利については様々な事柄が議論されてきていますが、被害者側の権利については置き去りにされてきたきらいがあるために設けられたものだといいます。
しかしながら、被害者の支援という仕事は「ある種カウンセリングであり、相手の負の側面と向き合うことで、支援する側も確実に「ダメージを受ける」ことになるのだそうです。
本書の場合、交通事故により登校中の児童三人と他に二人の大人が命を落としてしまいますが、亡くなった大人のうちの一人は妊婦さんでした。
病院に駆けつけてきた夫の大住宏志は錯乱し、医者や村野に殴りかかってくるほどだったのです。
こうした場合、亡くなった児童の親御さんのケアももちろん大事ですが、一瞬で妻と子を失った大住の哀しみは尋常でなく、そのケアをする支援員は更なる困難を背負うことになるのでした。
実際には、支援課という部門はないものの、現実には警察庁や警視庁、各県警、それに各弁護士会や民間にも犯罪被害者の役割を担う部門が設けられているようです。
行政では2004年に犯罪被害者基本法が成立し、各都道府県の警察や弁護士会、法テラスなどの組織も整備され、多方面での(直接的及び間接的な)犯罪被害者支援の制度が整いつつあるといいます。
現実に存在する犯罪被害者を支援するしくみとしては、とりあえずは下記を参照してください。
堂場瞬一という作者の作品は、概して長いものが多いようです。
本シリーズもその例外ではなく、一冊が文庫本で500頁を超える分量です。正直なところ、若干長すぎないかという気もしますが、そこは筆の力で読ませてしまいます。
主人公たちが犯罪被害者に寄り添う姿を描きながらも、犯罪被害者の心のうちにまで踏み込みその救済を図る支援員の姿は読みごたえがありました。