『警視庁犯罪被害者支援課シリーズ』とは
架空の「警視庁犯罪被害者支援課」という部門を舞台にした、登場人物のキャラクターもそれなりに立っている、普通に面白く読んだ警察小説シリーズです。
堂場瞬一の作品らしく、緻密な描写と、その緻密さに裏付けられたリアリティはさすがの作品でした。
『警視庁犯罪被害者支援課シリーズ』の作品
『警視庁犯罪被害者支援課シリーズ』について
本『警視庁犯罪被害者支援課シリーズ』の舞台になっている「犯罪被害者支援課」という部署は、犯罪の被害者の傷を負った心を手当てし、その傷が癒える手助けをしようとする架空の組織です。
でも、捜査一課などの直接に捜査を担当している部署からは、被害者のケアを重視するところから捜査を妨害しかねないとして邪魔者扱いされている存在でもあります。
・松木優里 : 村野の学生時代からの友人で力強い同僚支援課員
・安藤梓 : シリーズ第一作『壊れる心』での登場時は江東署初期支援員
・長住光太郎 : 支援課の地雷になるかもしれない支援課員
・本橋怜治 : 元捜査一課管理官だった支援課課長
・芦田浩輔 : 支援課係長。元盗犯担当捜査三課のベテラン刑事。
・西原愛 : 「公益社団法人東京被害者センター」勤務の村野秋生の元恋人。
ちなみに、本シリーズの村野を始めとする登場人物は、その多くが本シリーズの次シーズンにあたる『警視庁総合支援課シリーズ』でも再度登場してきます。
この「支援課」という部門について著者の著者の堂場瞬一は林家正蔵との「ミステリがなければ生きていけない」という対談の中で、「他人の痛みはわからないということを前提にしながら、それでも何とかしてあげたい、と願って動く仕事」だと書いておられます。
同時に同じ個所で、この部署は「架空の部署ではあるけれども、現実に似たような部署は存在する」と書いておられます。
そして、そこには「民間支援団体である『被害者支援センター』は、全国、各都道府県にあります。」という文言もあります( 犯罪被害者を支援するしくみ : 参照 )。
現実には、行政では2004年に犯罪被害者基本法が成立し、各都道府県の警察や弁護士会、法テラスなどの組織も整備され、多方面での(直接的及び間接的な)犯罪被害者支援の制度が整いつつあるといいます。
こうしたことを受け、現実には警察庁や警視庁、各県警、それに各弁護士会や民間にも犯罪被害者の救済の役割を担う部門が設けられているようです。
本『警視庁犯罪被害者支援課シリーズ』は、元警視庁捜査一課に属していた村野秋生という犯罪被害者支援課員が主人公となっていて、この村野の一人称視点で進められています。
この「支援課」の支援課員としては、元捜査一課管理官だった課長の本橋怜治や係長の芦田浩輔、それに支援課の地雷になるかもしれない長住光太郎らがいます。
そして、主役の村野の学生時代からの友人で力強い同僚である松木優里がおり、また支援課要員として育てていこうとしている、登場時は江東署の初期支援員であった安藤梓という女性がいます。
加えて、村野の元恋人として村野と共に遭った交通事故で車椅子生活となった西原愛という女性を忘れてはなりません。この女性は、民間の被害者支援センターでボランティアとして活動しています。
この交通事故により村野は今も痛みが残る膝を抱えることになり、愛は村野をかばったこともあって車いす生活になります。そして、その事故が原因で二人は別れることになったのです。
ともあれ、本シリーズはこれまでにない「支援員」という職務を担った警察官を主役にしたシリーズです。
被害者に寄り添う支援員の苦悩を描きながら、事件の真相を暴き出す支援課のメンバーの活躍は読みごたえがあります。