探偵・畝原は、地元テレビ局の祖辺嶋の依頼で、家族旅行も兼ねて、札幌郊外にあるナチュラル・パークの視察と経営者の早山という男の身辺調査をしにいくことになった。だが家族団らんも束の間。そこに大音量をあげながら一台の車が現われた。車の男は近所にゴミ山とともに暮らしているのだという。一方で畝原は兼田というヤクザ者から行方不明になった恩師の調査を依頼される。やがて調査の中で、それぞれの悲しき過去を知ることになるのだが…。「私立探偵・畝原」シリーズ待望の文庫化!(「BOOK」データベースより)
探偵・畝原シリーズの第八弾の長編ハードボイルド小説です。
この作家は、このシリーズでは、というより『ススキノ探偵シリーズ』もそうだけど、現実におきた事件若しくは出来事をテーマに作品を仕上げているようです。本作もごみ屋敷と貧困ビジネスという二つの問題を大きな縦糸として練り上げられています。
ススキノ探偵シリーズに比べ、トーンが重い本シリーズですが、相変わらず登場人物の個性が際立っていて物語として面白いのです。
先日読んだ大御所チャンドラーの文章と比べても非常に読み易いのです。描写も、チャンドラーは偏執的と言われかねない緻密さで情景を描写するのですが、こちらはただ単に映像を切り取りそこに置いただけで、後は読み手の想像力にまかせているような感じがします。
どちらも、暴力に対する耐性はかなり強いものがあるようです。畝原探偵に至っては、招待状無しにやくざのパーティーにも何の躊躇も無く参加できるという、恐怖感が欠落しているとしか言えない程の度胸もありそうです。そこらが現実社会との乖離を感じないででもないのですが。
しかし、相変わらず面白いシリーズではあります。