朝井 まかて

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出島に薬草園を造りたい。依頼を受けた長崎の植木商「京屋」の職人たちは、異国の雰囲気に怖じ気づき、十五歳の熊吉を行かせた。依頼主は阿蘭陀から来た医師しぼると先生。医術を日本に伝えるため自前で薬草を用意する先生に魅せられた熊吉は、失敗を繰り返しながらも園丁として成長していく。「草花を母国へ運びたい」先生の意志に熊吉は知恵をしぼるが、思わぬ事件に巻き込まれていく。

 

シーボルトの日本での暮らしを一人の庭師の眼を通して描いた長編小説です。

 

庭師の熊吉は異人さんの屋敷へ手伝いとして通うことになった。

「しぼると」というその人には「おたくさ」と呼ばれている滝という奥方がおり、「おるそん」という黒坊の使用人を使っていた。

長崎は出島にあるその屋敷の薬草園には種々の草木が植わり、日がなその庭の手入れをすることが熊吉の仕事だった。色々な侍や商人がその屋敷には訪れるが、熊吉はひたすら薬草などの仕分け、整理に精を出すのだった。

 

本書は、シーボルトの庭師として雇われた男を通して、異国の地に来たシーボルトという人間の実像を描いた作品、と言えるかもしれませんが、何よりシーボルトの眼を借りて見た日本再発見の物語と言って良いのではないでしょうか。

この作家の文章は決して派手ではありません。しかし、丁寧で品格があります。その語り口でシーボルトの口を通して、美しい日本の四季、日本人の誠実さを語らせていると感じられるのです。

 

維新直前までの日本は、日本人の生活に根差す礼儀や美徳、自然そのものに対する畏敬の心であふれていたと思われます。

今ではもう殆ど無いと言っても良いかもしれない、そうした日本の美しい心をも含めた「日本の美」に対する作者の想いが感じられる、失われつつある美しい日本への作者の賛歌とも言うべき一冊です。

[投稿日]2015年03月27日  [最終更新日]2018年10月27日
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