ストロベリーナイト [DVD]

竹内結子主演による人気刑事サスペンスの劇場版。誉田哲也原作の姫川玲子シリーズ「インビジブルレイン」を基に、連続殺人事件の謎を追う女刑事・姫川玲子と、彼女率いる姫川班を待ち受ける最大の試練を描く。共演は西島秀俊、大沢たかおほか。(「キネマ旬報社」データベースより)

映画の予告編を見てレンタルで見るつもりだったのですが、テレビで放映されました。映画の二時間強という時間の制約の中で、予想以上に良くできていました。

映画のタイトルは「ストロベリーナイト」ですが正確にはシリーズ中の「インビジブルレイン」が原作です。映画はより男と女に焦点を当ててあり、大沢たかおの牧田が少々気にならないでは無かったのですが、原作の陰鬱な雰囲気も壊すことなく、竹内結子の演技も光っていて満足出来た映画でした。

ストロベリーナイト

いま注目の作家・誉田哲也の「女性刑事・姫川玲子シリーズ」第1作をコミック化!
全身に無数の切創、ズタズタに切り裂かれた腹部、そしてカッターナイフで
ノドをスッパリ切られた異常な惨殺体が発見された。
警視庁捜査一課殺人犯捜査係主任警部補・姫川玲子率いる姫川班は捜査を続けるうち、同じ手口で惨殺された遺体を発見する。連続殺人事件のカギを握るのは、
インターネット上の謎のサイト『ストロベリーナイト』だった!(Amazon紹介文より)

姫川玲子シリーズ

本『姫川玲子シリーズ』は、女性刑事姫川玲子を主人公とする、ミステリーというよりはサスペンス色の強い作品が多い長編がメインの警察小説です。

作者誉田哲也の作品の中でも登場人物のキャラクター設定がとてもよく、またテンポ良い文章が物語世界に入り込み易い作品で、ベストセラーとなるのも納得のシリーズです。

 

 

主人公姫川玲子は男勝りの性格で、直観に従い班長として菊田和男巡査部長らを始めとする部下の男たちを引っ張って行きます。

また部下たちも、暴走しがちでどことなく危なっかしい姫川玲子をサポートしながら事件を解決していくのです。

ひたすら感覚で犯人を追い詰める姫川は、天敵ともいうべきガンテツこと勝俣健作警部補から、犯人と同じ思考方法をとる姫川は危なっかしいと指摘されたりもしています。

しかし、レイプという悲惨な過去を持つ主人公の姫川は、その過去をトラウマとして抱えながらも自分を支えてくれ、後に殉職してしまった女性警察官を思いながら職務に邁進していくのです。

 

本『姫川玲子シリーズ』ではポイントポイントで人情もののような心の交流をも描きながら物語が進んでいくので、読者としても気楽な気持ちで読み進めることができます。

ただ、猟奇的と言っても良い場面があるのでグロいシーンが駄目な人は少々注意が必要かもしれません。

時には、誉田哲也の他のシリーズ『ジウサーガ』とシンクロする遊びがあったりするのも楽しみの一つです。

 

 

テレビドラマ、また映画も、竹内結子が主演として姫川玲子を演じ、菊田を西島秀俊、井岡を生瀬勝久という同じキャストで作成されていて、個人的にはなかなか良くできていたという印象のドラマでした。

ただ、ガンテツこと勝俣を武田鉄矢が演じていたのは少々イメージ違いかと思っていましたが、見ているうちに武田鉄矢こそがふさわしいと思えてきたのですから、役者さんは大したものです。

 

 

更に、2019年4月からは新たな姫川玲子の物語として『ストロベリーナイト・サーガ』と題したドラマがフジテレビで放映されました。

しかし、キャストが姫川役を二階堂ふみというのはまあいいのですが、個人的には菊田和男をKAT-TUNの亀梨和也が演じるということでしたので、結局見ることもありませんでした。

 

 

なお、これまで『姫川玲子シリーズ』の第五弾として記載していた『感染遊戯』は、『姫川玲子シリーズ』としてはカウントしないこととするそうです。

というのも、「将来的に勝俣健作(かつまたけんさく)を主人公とする作品が刊行された場合、『感染遊戯』は「勝俣健作シリーズの第一作」と紹介されるであろうから」だということです( Book Bang : 参照 )。

誉田 哲也

「ダークサイド・エンジェル紅鈴 妖の華」でムー伝奇ノベル大賞優秀賞を、「アクセス」で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しています。

そのためか、この人の作品はどことなくホラーテイストが入っている感じがします。「ブルーマーダー」にしてもその殺害方法は全身の骨を砕くという普通ではない殺し方です。

ところが、文体はスピーディーで登場人物のキャラクター設定が非常に上手な作家ですね。特に姫川玲子シリーズはそれが一番うまくできていると思います。なので面白い。気がつけば一気に読了しているのです。

この作家の魅力はそれだけにとどまらず、青春小説も音楽小説もそのスピーディーな文体に乗ってこなすことです。刑事ものに限らず他の分野もまた面白いのだからたまりません。この作家もどれをとってもそれなりに面白いと思います。ただ、ホラー系が苦手な人は対象作品が限られますが・・・。

殆どの作品は読んだのですが、以前読んだ本の紹介は今一つできていません。今一番のっている作家さんの一人だと思います。

アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子

アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』とは

 

本書『アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』は『組織犯罪対策課 八神瑛子シリーズ』の第一弾で、2011年7月に273頁の文庫として出版された、長編の警察小説です。

女性版の悪徳刑事ものであり、目的のためには手段を選ばない女性刑事の活躍が小気味よいタッチで描かれています。

 

アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』の簡単なあらすじ

 

暴力を躊躇わず、金で同僚を飼い、悪党と手を結ぶ。上野署組織犯罪対策課の八神瑛子は誰もが認める美貌を持つが、容姿から想像できない苛烈な捜査で数々の犯人を挙げてきた。そんな瑛子が世間を震撼させる女子大生刺殺事件を調べ始める…。真相究明のためなら手段を選ばない、危険な女刑事が躍動する、ジェットコースター警察小説シリーズ誕生。(「BOOK」データベースより)

 

暴力団千波組の組長の娘が殺されたが捜査本部には入れてもらえないでいた八神瑛子は、裏社会のボス劉英麗の頼みで馬岳というブローカーを探していた。

そこに新たな殺人事件が起きた。被害者は林娜という中国人の若い娘であり、劉英麗によると、貴州省の山奥から出てきた娘で、馬岳によって新橋のエステに売り飛ばされたという。

瑛子が調べだした情報をもとに、馬岳が現れたところを里美の応援で何とか捕まえるのだった。

上野署署長の富永は、きな臭い瑛子の行動に対し合同捜査本部へ加わり川上と組むことを命じる。

瑛子は、劉英麗から聞いた郭在輝を訪ね、林娜が映った裏ビデオの詳細を聞き出し、犯人と思しき長尾進があるフィットネスクラブにいることを突き止める。しかし、事件はこれで終わったわけではなかった。

 

アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』の感想

 

本書『アウトバーン』は、ミステリーとしてはよくできているとは言い難いかもしれません。

犯人逮捕に結びつく肝心な情報は劉英麗のような八神瑛子独自の裏社会を通じた情報網からわりと簡単にもたらされ、他の警察小説であるような捜査や推理の結果ではありません。

しかし、そうした裏社会からもたらされる情報も、瑛子自身が普段から情報網を丁寧に作り上げていたからこその話であり、そういう意味では瑛子の努力により情報が集まってくると言えるのでしょう。

その点で、通常の謎解きミステリーではなく、裏社会と瑛子とのつながりこそ重要であり、そのつながりを重点的に描く作品という意味で普通のミステリーとは異なると思うのです。

 

本シリーズの面白さは、何といっても八神瑛子というキャラクターにあります。

誰しもが認める美人でありながら汚れ仕事に手を染めることを厭わず、それどころか警察官を相手に金貸しをやっており、その引き換えにその警察官の弱点を抑え、いざという時は自分の言うことを聞かます。

勿論、やくざらから情報と引き換えに金を受け取ることも当たり前であり、剣道三段の腕っぷしで、度胸も満点の女性です。

 

また、瑛子が勤務する上野署の署長である富永昌弘をはじめとする登場人物たちが個性的です。ほかに、元女子プロレスラーの落合里美や瑛子を裏社会から支える劉英麗という蛇頭のボスや、千波組若手幹部の甲斐道明など魅力的です。

特に富永は警察官として一途であり、その内心の変化の描写には面白いものがあります。また、仙波組の甲斐も面白い存在ですが、もう少し書き込みが欲しいところではありました。

本書は今回再読したものですが、初回に比べより面白さを感じたように思います。それは再読したことで八神瑛子というキャラクターをより知ったということなのかもしれません。

ともあれ、初回読了時に思ったよりも魅力的なキャラクターであったようです。

深町 秋生

「果てしなき渇き」が第3回『このミステリーがすごい!』大賞の受賞作品だと聞いてこの作家の作品を始めて読みました。

次いで読んだ「東京デッドクルージング」については当時のメモで「面白くない」と書いています。その一年後、何故か今度は「アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子」を読んでいるのです。

似た印象の作家で木内一裕という人がいますが、この人の作品は続けて読んでいるので、深町秋生という作家とどこが違うのか、そのうちにまた深町秋生の違う作品を読んで比べて見たいと思います。

上記は2015年5月に書いた文章です。その後この作者の作品を読み続けていたのですが、次第に面白くなってきているように思います。

特に近年の作品の『探偵は女手ひとつ』や『卑怯者の流儀』などの面白さからは眼を話せなくなってきています。

上記の二冊は共に短編集なのですが、軽いハードボイルドミステリーで読みやすく、それでいて主人公の造形が良くできているとともに、脇役の登場人物たちも生き生きとしていて引き込まれます。

両者ともに続編を期待するところですが、今のところ出版されていません。

アンフェア the movie

篠原涼子が孤高の女刑事を演じる人気TVドラマシリーズの劇場版第1弾。警視庁公安部の警部補・雪平夏見は警察内部の不正が書かれた機密文書を追跡。そんな中、娘が事件に巻き込まれて怪我を負い、さらに搬送先の病院がテロリストに占拠されてしまう。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

悪いけど、ひどいです。こんな設定の映画がよくできたと思いました。

もう少し物語の前提となる舞台をきちんと組み立ててくれなければ役者さんがどれほど頑張ろうと生きません。

 

国家の最高機密を扱う機関の最高のセキュリティーが施されている筈の病院に、一刑事がそれも地下道から侵入できるなんて設定はありえません。

また、テロリストが待ち構えている建物にSATが単純にそれもひと固まりで突入するし・・・。こんなのは序の口で、言いたいことは山ほどあります。

だから日本のアクション物はレベルが低いということになるのではないのでしょうか。

 

この映画を面白いという人もいるからヒットとしたのでしょうし、あまり批判は書きたくないのですが、この映画に関しては少々ひどすぎたので、ごめんなさい。

刑事・雪平夏見シリーズ

刑事・雪平夏見シリーズ(2020年03月22日現在)

  1. 推理小説
  2. アンフェアな月
  3. 殺してもいい命
  1. 愛娘にさよならを
  2. アンフェアな国

 

テレビドラマは大河くらいしか見ない私ですが、テレビドラマ「アンフェア」の結構良い評判に魅かれ、ケーブルテレビで映画「アンフェア the movie」があった時に見てみる気になりました。

しかし、その出来があまりにひどく、当然、原作など勿論読む気にはなりませんでした。

 

 

ところが、ある日たまたま図書館で「アンフェアの原作」という謳い文句に魅かれて『殺してもいい命』を借りてみたところ、これが構面白いのです。

無駄に美しいと評される雪平夏見の活躍が、誉田哲也が描く『姫川玲子シリーズ』の主人公である姫川玲子にも似ていながら、また独自のカラーを持って活躍しているではないですか。すぐにこの作家の作品を多数予約しました。

 

 

すると、原作である『刑事・雪平夏見シリーズ』は映画版とは異なりシリーズそのものが面白かったのです。雪平夏見の破天荒ぶりは突き抜けていて、それが作品世界をうまく構築していました。

こういう物語は嫌いじゃありません。正直なところ、『姫川玲子シリーズ』と比べれば作者には申し訳ないけど魅力は落ちますが、この物語はそれとして面白く、お勧めです。

 

 

ただ、TVドラマは未見ですが、映画はいただけない。

秦 建日子

元々脚本家として活躍されている方みたいですね。

脚本家出身と言えば「のぼうの城」の和田竜、「一夢庵風流記」の隆慶一郎といった人たちがおられます。

が、その方達の場合と異なり、残念ですが、私とはちょっと波長が異なるようで、今一つ小説世界に入れませんでした。でも、「刑事・雪平夏見シリーズ」は,、まあ、面白く読むことができました。

凍える牙 [韓国版DVD]

乃南アサによる同名小説を韓国で映画化したクライムサスペンス。男の身体が突如発火、炎上する事件が発生。しかもその遺体には獣の咬傷が残されていた。刑事・サンギルと新米刑事のウニョンが捜査に乗り出すが…。ソン・ガンホとイ・ナヨンが共演。(「キネマ旬報社」データベースより)