30年以上前に、今は「朝日文庫」その他のレーベルになっているらしい、ジュブナイルと分類される「ソノラマ文庫」という文庫がありました。この文庫で菊地秀行の「魔界都市〈新宿〉」や高千穂遙の「クラッシャージョウ」などを見つけたものです。
後に「キマイラ・吼」シリーズとなる「幻獣少年キマイラ」を、天野喜孝氏(だったと思う)のイラストが印象的で購入したと覚えています。変身もののこの本は格闘技小説の片鱗も見え、SF、ファンタジーいずれともつかない変な魅力がありました。
その後この作家はエロスとバイオレンスの世界で花開くことになりますが、「闇狩り師」にしても「サイコダイバー」にしても、人の精神世界を描くという点では一致していると思います。
その精神世界の描写のひとつの到達点として「陰陽師」シリーズがあり、「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」があるのではないでしょうか。共に怪異譚を描くのですが、その本質は人間の精神を言っているようです。この作家の各作品を通して語られるのはそうした人間の心の哀しさであるような気がします。
その文体は会話文が多く、短めのセンテンスをたたみ掛けてくるので、テンポよく読み進めることができます。漫画チックという言い方もできるかもしれませんが、それがまた私のような読者にはたまりません。軽く読めて、お勧めです。
ただ、この作家のシリーズものはどれも長い。20年を経てもなお終わっていないシリーズが何本もあります。
彼の書いたバイオレンスは格闘技小説というジャンルを切り開いたと言っても良いのではないでしょうか。
他方「神々の山嶺」のような山岳小説、更には釣りをテーマにした作品まで著しています。
以下のおすすめの作品は参考にすぎません。他にも面白い作品がたくさんあります。
お勧めの作家のひとりです。