熾火

私立探偵・畝原は、足許に突然縋りついてきた少女に驚きを隠せなかった。彼女は血塗れで、体中が傷ついていたのだ―。言葉も発することなく意識を失った少女。だが、収容先の病院で、少女を狙ったと思われる人物たちに、畝原の友人・姉川が連れ去られてしまう。何かを隠すような警察の捜査と少女の疵跡は、何を意味するのか。姉川を救うため、畝原は恐るべき犯人と対峙する。傑作長篇ハードボイルド。(「BOOK」データベースより)

 

本書に関しても、読んだのが遠い昔であり、かつ時のメモが残っていないため、レビューを書けません。申し訳ありません

悲鳴

ごくありふれた浮気調査のはずだった。私立探偵・畝原の許へ現れた女は、夫の浮気現場の撮影を依頼してきた。だが、畝原が調査を始めると依頼人から指定された現場に現れたのは夫の本当の“妻”だったのだ。依頼人の女は、何者なのか?やがて畝原へのいやがらせが始まり、依頼人の女に関わった者たちに危機が。警察、行政をも敵に回す恐るべき事実とは何か!?深く刻まれた現代の疵を描く、傑作長篇ハードボイルド。(「BOOK」データベースより)

 

本書に関しては、読んだのが遠い昔であり、かつ時のメモが残っていないため、レビューを書けません。申し訳ありません。

流れる砂

私立探偵・畝原の受けた依頼は、些細なマンションの苦情だった。女子高生を部屋へ連れ込む区役所職員の調査の中で畝原は、彼の父親が、口を封じるように息子を殺して心中する現場に遭遇してしまう。だがそれは、札幌を揺るがす事件の序章に過ぎなかった…。翌日、行方不明の娘を持つ女性の素行調査を依頼された畝原は、殺された職員との恐るべき関係を掴むが―。関係者が殺されるなか、畝原は、巨大な闇の真相に辿りつけるのか!?傑作長篇ハードボイルド。(「BOOK」データベースより)

 

探偵・畝原シリーズの第一弾の長編ハードボイルド小説です。

 

正統派の探偵の活躍です。

少々調査の対象となる人物造形が極端すぎるかと思わないでもないのだけれど、その説明も主人公の口を借りて為されていて、まあ、そういう人物もいないことも無いかと自分を納得させてしまいます。それくらい、ストーリーに絡む主人公の行動が興味を引き、物語の中に入ってしまいました。

本『探偵・畝原シリーズ』には『ススキノ探偵シリーズ』のような明るさは殆ど無いのですが、これはこれで面白く読ませてもらっています。

待っていた女・渇き

八年前、卑劣な罠で新聞記者を追われた畝原は、以来探偵として一人娘の冴香を養ってきた。ある日、畝原は娘の通う学童保育所で美貌のデザイナー・姉川明美と出会った。悪意に満ちた脅迫状を送りつけられて怯える彼女の依頼を受けた畝原は、その真相を探りはじめたが―。畝原と姉川が出会う猟奇事件を描いた短篇「待っていた女」と長篇「渇き」を併録した、感動のハードボイルド完全版。(「BOOK」データベースより)

 

本書は探偵・畝原シリーズの第一弾の長編ハードボイルド小説です。

 

守るべき過去はない。だが、守るべき人がいる。私立探偵畝原の許に舞い込んだ奇妙な依頼は北の都市・札幌を揺るがす事件へと発展していった―今、最も期待される作家が描く、書下ろし長篇ハードボイルド小説。(「BOOK」データベースより)

 

上記文章は、当初出版されていた勁文社版の『渇き』という単行本の紹介文です。

この『渇き』と『待っていた女』という短編との、このシリーズで重要な役目を担っている姉川明美との出会いを含め、姉川が絡んだ事件をテーマにした作品がハルキ文庫から出版されたのが上記のAmazonリンクのイメージのものです。

 

 

そして、下記は『渇き』についての私のメモ、別ブログでの私の文章です。

 

やはり、というか、それなりに面白く読むことができました。

ただ、どうしても『ススキノ探偵シリーズ』の「俺」と比べてしまうのだけれど、ススキノ探偵の方が私の好みではありました。

どこが違うのだろう、と考えてみると、まず、ススキノ探偵の方が時間的に後で書かれている、という点があります。その分作者の表現力が増して読み手として満足できたのかもしれません。

でも、一番の理由は登場人物のキャラクターでしょうか。ススキノ探偵の方が軽妙ですっきりしています。こちらは、娘持ちで生活感一杯です。

何より、作品として、他の作家のハードボイルド作品との差別化があまり無い感じがします。

ストーリーは面白いです。でも、そこに「畝原」で無ければならない必然性があまり感じられず、他の作家の作品を押しのけてまでこの本を読みたいと思わせるものが今一つの感じです。

 

本書は、本「探偵・畝原シリーズ」の重要な登場人物である姉川明美との出会いが描かれる本作品だけど、内容自体は別に特別なものではありません。

単純に姉川明美に付きまとう怪しい人物の調査という、ごくありふれた事件であり、結末も本シリーズでは別に特別なことではないのです。

本当に、ただ姉川明美との出会いが描かれているというだけ、なのだけど、『ススキノ探偵シリーズ』と共に本『探偵・畝原シリーズ』のファンでもある私としては、その出会いこそが大切であり、更にはタクシー運転手の太田さんなども登場する大切な一編でした。

でも、この作家の作品はまたすべて追いかけて読むと思います。

探偵・畝原シリーズ

探偵・畝原シリーズ(2018年10月29日現在)

  1. 待っていた女・ 渇き
  2. 流れる砂
  3. 悲鳴
  4. 熾火
  5. 墜落
  1. 挑発者
  2. 眩暈
  3. 鈴蘭

 

ススキノ探偵シリーズ」とは異なり、正統派のハードボイルド作品です。

饒舌な「俺」とは異なり、一人娘を溺愛するよき父親でもある主人公は無駄口をたたくことは殆どありません。

志水辰夫の叙情性はなく、北方謙三のクールさもありませんが、とても読みやすい文章で、各巻共かなりの長尺なのですが長さのわりに割と楽に読めると思います。

 

どうしてもこの作家の「ススキノ探偵シリーズ」と比べてしまい、確かに、ススキノ探偵の方が私の好みではあるのです。しかし、本シリーズも面白い作品であることは間違いありません。社会の矛盾を毎回のテーマとし、その矛盾からくる事件に正面から取り組む主人公の魅力は「俺」に勝るとも劣らないものがあります。

本シリーズも主人公を取り巻くキャラクターがよく配置してあり、物語世界に浸っていれば、気付けば時が過ぎていることでしょう。

こちらのシリーズの方が正当派な分だけ好きだという人もかなりいるのではないでしょうか。

猫は忘れない

知り合いのスナックママ、ミーナから、旅行中の飼い猫の世話を頼まれた“俺”は、餌やりに訪れたマンションで、変わり果てた姿となった彼女を発見する。行きがかりから猫のナナを引き取り、犯人捜しを始めた“俺”は、彼女の過去を遡るうちに意外な人物と遭遇、事件は予想外の方向へと進展するが…猫との暮らしにとまどいながらも、“俺”はミーナの仇を取るためにススキノの街を走り抜ける。ススキノ探偵シリーズ第12作。(「BOOK」データベースより)

やはり出版年が新しい作品の方が面白い、と言うより作品がきちんと纏まっている気がする。

知り合いのスナックママ、ミーナから、旅行中の飼い猫の世話を頼まれた“俺”は、餌やりに訪れたマンションで、変わり果てた姿となった彼女を発見する。行きがかりから猫のナナを引き取り、犯人捜しを始めた“俺”は、彼女の過去を遡るうちに意外な人物と遭遇、事件は予想外の方向へと進展するが…猫との暮らしにとまどいながらも、“俺”はミーナの仇を取るためにススキノの街を走り抜ける。ススキノ探偵シリーズ第12作。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の長編第十一弾となるハードボイルド小説です。

 

やはり出版年が新しい作品の方が面白い、と言うより作品がきちんとまとまっている気がする。

半端者 – はんぱもん –

授業にも出ないで昼間から酒を飲み、思い通りにならない現実に悩みながらも、また酒を飲む。ひょんなことから知り合った謎のフィリピン女性、フェ・マリーンと恋に落ちた大学生の“俺”は、行方不明となった彼女を捜して、ススキノの街をひたすら走り回る。若き日の“俺”、高田、そして桐原の人生が交錯し、熱く語らい、ときに本気で殴り合う。デビュー作『探偵はバーにいる』の、甘く切ない前日譚が文庫オリジナルで登場。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の長編第十弾となるハードボイルド小説です。

 

本書の刊行が2011年3月ですから、やはり、作品を重ねるにつれて面白さも増してくるように思えます。

確かに、中には後で出版されたから面白いとはいえない作品もあります。しかし、基本的に経験は大きいのではないでしょうか。

本作品も第一作に比べると格段に練れている印象を受けます。でも、もしかしたら、内容がシリーズ第一作よりも前の時代設定であり、主人公の青春記的な側面も持っているのでそう思うのかもしれませんが。

ただ、フィリピーナが突然に主人公の「俺」に好意を寄せるなど唐突と言えなくもない点もありますが、そうした事柄は殆ど気になりません。それよりも、後々のこのシリーズの重要メンバーの高田や桐原との出会いなどが描かれていて、そちらの方に関心が高まりました。

旧友は春に帰る

「…ただ、お願い。助けて」突然送られてきたモンローからのメッセージは、“俺”の眠気を覚ますのに充分なものだった。どうしても事情を話そうとしない彼女を夕張のホテルから助け出し、無事に本州へと逃がしてやった直後から、“俺”の周りを怪しげな輩がうろつき始める。正体不明のトラブルに巻き込まれ、地元やくざに追われるはめになった“俺”は、ひとり調査を開始するが…旧友との再会、そして別れが哀切を誘う感動作。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の長編第九弾となるハードボイルド小説です。

 

少々ストーリーに無理がある感じがしないでもなかったのと、モンローの位置付けが若干分かりにくかった。

探偵、暁に走る

地下鉄で乗客とトラブルになっていたところを救ったのがきっかけで、“俺”はイラストレーターの近藤と飲み友だちになった。その近藤が何者かに刺されて死んだ。友人の無念を晴らすべく、ひとり調査を開始した“俺”の前に、振り込め詐欺グループ、闇金融、得体の知れない産廃業者らの存在が…絶体絶命の窮地に陥りながらも、“俺”は友の仇を討つために札幌の街を走り回る。好調シリーズ、長篇第8作。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の長編第七弾となるハードボイルド小説です。

 

ススキノ探偵シリーズはこの本から読み始めました。というか、東直己という作家自体、本書で知った次第です。

この本を読んだときのブログに、「これは面白い。私の感性にピッタリとはまった作品でした。こういうことは滅多にないから、たまにあるととても嬉しい。」という文章から始まる一文を書いていました。以下そのままです。

そもそもは、大泉洋主演の映画「探偵はBARにいる」がそこそこ面白かったので、原作でも読んでみようか、という軽いノリでした。例によって、図書館で丁度「東 直己」という著者名があったので即借りた次第です。500頁を越える分量なので少々分厚い、と思ったのだけど、一気に読んでしまいました。

まさか主人公が50歳のおっさんとは思ってもみなかったけど、読み終えてみると大人のハードボイルドでした。

 

 

北方謙三の『ブラディ・ドール シリーズ 』や、『ブラディ・ドール シリーズ 』に統合されたらしい『街シリーズ』のちょっとキザでかっこいい男たちとはまた違います。

同じようにかっこいい男ではあるのだけれど、キザではありません。軽妙な会話と言いまわしは読んでいて非常に小気味よく、早速次の作品を読まなければ、と思わされました。

 

 

登場人物も個性的な人物が描かれており、その夫々が魅力的です。

本『ススキノ探偵シリーズ』一作目の『探偵はバーにいる』から順に読んで、各登場人物の背景を知りたいと、そう思わせる作品です。

ハードボイルドが好きな人なら読むべきですし、好きでない人も多分、このシリーズは好きになると思います。

この作家を知らなかった私が恥かしい。

ライト・グッドバイ

馴染みの退職刑事種谷からの突然の連絡。呼び出しの応じた“俺”を待っていたのは「殺人容疑者と親友になれ」という頼みだった。未解決のままの女子高生行方不明事件の証拠を見つけるため、容疑の濃厚な男の家に上がるまでになれ、ということらしい。“俺”は、バーでの偶然の出会いを装い、男に近づくことを企む。そしてそれは生涯最低の冬の幕開けでもあった。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の長編第七弾となるハードボイルド小説です。

 

今回の物語の対象となる男がかなりいやらしい男として描かれていて、感情移入しにくい物語でした。

物語の核となる人物が問題で、筋立ても少々無理が感じられ、このシリーズの中では低評価の一冊という印象でした。

 

こうして見ると、最初に読んだ「探偵、暁に走る」が一番面白く読めた本のような気がします。

核となる人物のキャラクターもしっかりと書き込まれていて、主人公が関わっているその筋立てもまったく無理が感じられません。

比べてはいけないのかもしれないけれど、それに比べてこの一冊は・・・、とどうしても思ってしまいます。