八年前、卑劣な罠で新聞記者を追われた畝原は、以来探偵として一人娘の冴香を養ってきた。ある日、畝原は娘の通う学童保育所で美貌のデザイナー・姉川明美と出会った。悪意に満ちた脅迫状を送りつけられて怯える彼女の依頼を受けた畝原は、その真相を探りはじめたが―。畝原と姉川が出会う猟奇事件を描いた短篇「待っていた女」と長篇「渇き」を併録した、感動のハードボイルド完全版。(「BOOK」データベースより)
本書は探偵・畝原シリーズの第一弾の長編ハードボイルド小説です。
守るべき過去はない。だが、守るべき人がいる。私立探偵畝原の許に舞い込んだ奇妙な依頼は北の都市・札幌を揺るがす事件へと発展していった―今、最も期待される作家が描く、書下ろし長篇ハードボイルド小説。(「BOOK」データベースより)
上記文章は、当初出版されていた勁文社版の『渇き』という単行本の紹介文です。
この『渇き』と『待っていた女』という短編との、このシリーズで重要な役目を担っている姉川明美との出会いを含め、姉川が絡んだ事件をテーマにした作品がハルキ文庫から出版されたのが上記のAmazonリンクのイメージのものです。
そして、下記は『渇き』についての私のメモ、別ブログでの私の文章です。
やはり、というか、それなりに面白く読むことができました。
ただ、どうしても『ススキノ探偵シリーズ』の「俺」と比べてしまうのだけれど、ススキノ探偵の方が私の好みではありました。
どこが違うのだろう、と考えてみると、まず、ススキノ探偵の方が時間的に後で書かれている、という点があります。その分作者の表現力が増して読み手として満足できたのかもしれません。
でも、一番の理由は登場人物のキャラクターでしょうか。ススキノ探偵の方が軽妙ですっきりしています。こちらは、娘持ちで生活感一杯です。
何より、作品として、他の作家のハードボイルド作品との差別化があまり無い感じがします。
ストーリーは面白いです。でも、そこに「畝原」で無ければならない必然性があまり感じられず、他の作家の作品を押しのけてまでこの本を読みたいと思わせるものが今一つの感じです。
本書は、本「探偵・畝原シリーズ」の重要な登場人物である姉川明美との出会いが描かれる本作品だけど、内容自体は別に特別なものではありません。
単純に姉川明美に付きまとう怪しい人物の調査という、ごくありふれた事件であり、結末も本シリーズでは別に特別なことではないのです。
本当に、ただ姉川明美との出会いが描かれているというだけ、なのだけど、『ススキノ探偵シリーズ』と共に本『探偵・畝原シリーズ』のファンでもある私としては、その出会いこそが大切であり、更にはタクシー運転手の太田さんなども登場する大切な一編でした。
でも、この作家の作品はまたすべて追いかけて読むと思います。