『新幹線大爆破』の高倉健と佐藤純彌監督が再びコンビを組んだアクション。無実の罪を着せられた現職検事が、執拗な刑事の追跡をかわしながら、自らを罠に陥れた見えない敵に復讐するため、壮大な旅に出る。“角川シネマコレクション 9月度”。(「キネマ旬報社」データベースより)
健さんファンの私としては、健さんが出演しているだけでいいのだけれど、映画自体も結構面白かったと記憶しています。
面白い小説を探している時に何かのヒントになるかもしれません。
『新幹線大爆破』の高倉健と佐藤純彌監督が再びコンビを組んだアクション。無実の罪を着せられた現職検事が、執拗な刑事の追跡をかわしながら、自らを罠に陥れた見えない敵に復讐するため、壮大な旅に出る。“角川シネマコレクション 9月度”。(「キネマ旬報社」データベースより)
健さんファンの私としては、健さんが出演しているだけでいいのだけれど、映画自体も結構面白かったと記憶しています。
東京地検のエリート検事・杜丘冬人は、新宿駅の雑踏で突然、女性から強盗強姦犯人だと指弾される。濡れ衣を着せられたその日から地獄の逃亡生活が始まった。自分を罠に陥れた者は誰なのか。怒りだけが彼の支えだった。巨匠の最高傑作長篇。(「BOOK」データベースより)
西村寿行の描く、ハードロマン小説に連なる作品群の皮切りとなった長編冒険小説です。
主人公東京地検検事・杜丘冬人は突然凶悪事件の犯人として逮捕される。隙を見て逃げ出した杜丘は真相を解明するべく北海道へ飛ぶ・・・。
この本の頃から冒険小説としての色合いが濃くなってきていると記憶しています。
高倉健主演で映画化もされ、大ヒットしました。更には2017年にジョン・ウー監督の手により『マンハント』というタイトルで福山雅治を主人公としてリメイクされました。
正統派の冒険小説と言って良いと思います。
確かに、熊と戦うなど荒唐無稽さが無いわけではないのですが、物語の流れとして読ませるのは筆の力なのでしょうか。
鯱シリーズ(完結)
仙石文蔵をリーダーとするスーパーマン達の活躍を描く、能天気な冒険活劇小説としてただただ楽しんで読む本です。
勿論、エロスとアクション満載の超人が活躍するスパイ、アクション小説ですから、エンターテインメント小説として他には何も言うことはありません。深読みすればできるのでしょうが、その必要もないと思います。
単純に面白い本です。
癌病船シリーズ(完結)
病船・北斗号は「世界保健機構の付属機関であるリチャード・スコット財団が、難病・癌と戦うべく建造した未曾有の病院船」です。ヒューマニズムの極致のようなこの船なのですが、世界の現実に向かうと何かと障害が立ちはだかり、その障害に立ち向かうハードアクション小説として描かれています。
テーマは人間の病魔との闘いという実に普遍的なテーマなのですが、それをアクション小説に仕上げる力量は見事なものです。
ただ、このテーマ故に苦手とする人もいるかもしれません。
でも私は面白い小説としてお勧めします。
この本も古書、もしくはKindle版(上記イメージ)でしか見当たらないようです。
はっきりとしたことは分かりませんが、何ヵ所かの出版社から出されているようです。
こちらもまた同様ではっきりとしたことは分かりませんが、作画は田辺節雄氏の手になるようです。
突如、日本を襲ったバッタの巨大な群れは、東北地方で米、野菜を喰いあらし、人々をパニックに陥れた。不信、暴動、輪姦……最悪な事態をむかえ、対策は急を要した。しかし、政権を維持しようとする中央政府の出した結論は、東北六県を切り捨てる冷酷・非情なものであった。やむをえず、東北地方の県民による「東北地方守備隊」が組織され、中央との対立はついに限界に達する……! 空前絶後の想像力で描く、感動のスーパー・パニック・ロマンの傑作!( Kindle版 上巻 : 内容紹介より)
幅10キロ、長さ20キロにも及ぶ飛蝗の群団に襲われ、中央政府との対立を余儀なくされた東北六県は、ついに独立を宣言した。しかし、中央政府は武力鎮圧を重ね、悲劇は悲劇を呼ぶことになる。人は飢え、人心はついに野獣と化し、全てが滅びへと向かってひた走っていった。自然の凄絶さ、人間の生地獄……空前絶後の想像力で描き上げた、感動のスーパー・パニック・ロマン巨編。( Kindle版 下巻 : 内容紹介より)
文庫本で上下二巻の、西村寿行のパニックロマン長編小説です。
中国で大量発生し海を渡ってきた飛蝗(トノサマバッタ)のため東北地方は莫大な損害を受ける。しかし、日本政府は東北地方を救済するどころか大都市のために食料等の供出を命じる。
そこで、東北六県は自らの存続をかけ日本国に見切りをつけ独立を宣言し、日本国との軍事的対立をも辞さない構えをとることとなるのだった。
国と地方自治体との対立から個人レベルでの争いまで、危機的状況下での描写が迫力あるタッチで描かれます。
パニック小説と聞いて今でも一番に思い浮かぶのは小松左京の『日本沈没』とこの作品です。この作者が一番脂がのっている時期の作品ではないでしょうか。
『日本沈没』は国土を失った民族の行く末が書きたかった、と著者の小松左京氏が語っていましたが、本作品はエンターテインメント性の高い、地方の独立、国土の分割に際してのシミュレーション小説としての面白さと言えるでしょう。
フィクション故の面白さに満ちた作品だと思います。
本作品も古本しか見当たりません。若しくは、Kindle版なら出版されています。
最初に読んだのが「瀬戸内殺人海流」でした。公害をテーマにした社会性の強いミステリで、この本以来殆どの作品を読んでいると思います。
この後次第に「君よ憤怒の河を渉れ」に代表される冒険小説へとシフトし、「鯱シリーズ」のようないわゆるハードロマンと称される作品群へと移っていきます。
西村寿行という人は自ら狩猟をし、それもかなりの腕前だったのですが、ある時殺生をすることの無意味さを悟り、狩猟禁止を唱えるようになったと、どの本かのあとがきに書いてありました。「黄金の犬」など、動物を主題にした作品も数多くあり、動物に対する愛情が透けて見えます。
ハードロマンと括られる作品はエロスとバイオレンスの描写がかなりのもので、そういえば初期作品を除けば大半の作品にその要素があると言えるかもしれません。
その一方で、「滅びの笛」や「癌病船」のようにバイオレンスタッチはありつつも社会性の強い作品も書かれています。
エロスやバイオレンスが嫌いな方は別として、面白い本、エンターテインメント性の強い本という意味では上位にランクされる作家ではないでしょうか。
ただ、今ではそのほとんどの作品が絶版であるらしく、残念ながら古書若しくは図書館から借りて読むしかないようです。ただ、角川文庫から電子書籍版で多数の作品が出版されるようです。
我が家の埃をかぶった本棚から、昔買った西村寿行の一連の作品群を見つけてきました。また少しずつ再読してみようと思います。
本書『土漠の花』は、ソマリアに赴任している陸上自衛隊員を主人公とした長編のアクション小説で、日本推理作家協会賞を受賞した作品です。
重厚で存在感のある『龍機兵シリーズ』に比べ、よりエンターテインメントに徹した感のある、読みやすいアクション小説として仕上がっている。
ソマリアの国境付近で活動する陸上自衛隊第一空挺団の精鋭達。そこに命を狙われている女性が駆け込んだ時、自衛官達の命を賭けた戦闘が始まった。一人の女性を守ることは自分達の誇りを取り戻すことでもあった。極限状況での男達の確執と友情。次々と試練が降りかかる中、生きて帰ることはできるか?一気読み必至の日本推理作家協会賞受賞作!(「BOOK」データベースより)
本書が『龍機兵シリーズ』よりもエンターテインメント性が強いとはいっても、社会性が無いというわけではありません。
逆に、より現実に即した物語という意味では抱えるテーマは大きいかもしれません。
本書『土漠の花』の舞台となるソマリア及びジブチは、アフリカの東端に位置し、アラビア海に突き出した形状の半島の沿岸を占めています。
ソマリア(正式にはソマリア連邦共和国)は近年海賊の出没が問題となっていて、各国がその対策に苦慮している地域です。
本書の自衛隊も日本の船舶の護衛のために派遣されているのです。
本書で描かれている物語は、上記の海賊とは関係のない、内陸部で起きた自衛隊への襲撃事件についての話です。
フィクションではありますが、前述のように、本書『土漠の花』の提起する問題は大きいものがあります。
自衛隊員が事実上の軍隊、軍人として、外国で、外国の人間に対し現実に発砲するという事実がいかに大きなことであるか。
自衛隊員として他国の軍勢に対して発砲することが、国内的に、また国際的にさまざまな問題を巻き起こすであろうことは素人でも分かります。本書でも少しですが触れられています。
しかし、本書ではそれよりも、ひとりの人間として人を殺すことへの葛藤や、指揮官としての苦悩など、人間としての側面に焦点が当てられています。
「自衛隊というよりは人間として戦わざるをえない」状況だと、これは著者本人の言葉です。
残念なのは、本書『土漠の花』でのそうした問題への掘り下げがあまり深くは感じられないことです。それよりも、戦闘行為の描写に興味が移ってしまいます。
著者は多分、意識的に人間の内面の深みにまで踏み込むことを避けられたのではないでしょうか。
実際、インタビュー記事を読むと「現代社会のリアルな国際情勢を背景にしたエンタメの復権」などと著者本人が語られていたので、案外的外れでも無かったと思ったものです。
そういう「問題提起」という意味では、安生正の『ゼロの迎撃』の方が鋭かったかもしれません。
日本の都市部でのテロリストへの反撃行為自体の持つ法律的な問題点に対する掘り下げや、分析官である主人公の自分のミスに対する煩悶など、本書よりも緻密であったと思います。
この提起されている問題に対する関わりの浅さが残念ながら物足りなく思ってしまいました。でも、アクション小説としての面白さは十分なものがあります。そう割り切ってしまえば、かなり面白い物語でしょう。
本書『機龍警察 未亡旅団』は、『機龍警察シリーズ』第四弾の長編のアクション警察小説です。
前巻まで三人の龍機兵の操縦者たちの過去が語られてきました。今回は城木貴彦理事官と由起谷志郎警部補の話です。
チェチェン紛争で家族を失った女だけのテロ組織『黒い未亡人』が日本に潜入した。公安部と合同で捜査に当たる特捜部は、未成年による自爆テロをも辞さぬ彼女達の戦法に翻弄される。一方、特捜部の城木理事官は実の兄・宗方亮太郎議員にある疑念を抱くが、それは政界と警察全体を揺るがす悪夢につながっていた―世界のエンタテインメントに新たな地平を拓く“至近未来”警察小説、衝撃と愛憎の第4弾。(「BOOK」データベースより)
ある密売取引の現場を急襲した神奈川県警は、バイヤーである不法入国者グループを逮捕しました。
ところが、若い女性ばかりのそのバイヤーのうちの数人が包囲陣にむかって駆け出し、周りを巻き込んで自爆してしまいます。
凄惨な現場には倒壊した車両や炎上する家屋が残されたのみで、残る六人の女性の姿はどこにもありませんでした。
本書『機龍警察 未亡旅団』はこれまでの作品と異なり、城木貴彦理事官と由起谷志郎警部補の話が語られてはいます。
しかし、現在進行している事件、それも未成年らによる戦闘行為がメインのテーマだとの印象があります。
テロ行為そのものが許されないことは勿論なのですが、加えて「児童を徴集、あるいは誘拐して兵士に仕立て上げ」られている現実、「最も安価で効果的な戦力増加方法」だとして未成年者が戦闘員として闘っているという現実に対する問題提起がなされています。
より詳しく言うと、本書『未亡旅団』ではチェチェン紛争という現実を詳細に描写し、テロルの実行犯側の論理をも展開しています。
私達はチェチェン紛争のそうした現実を知りません。描かれている紛争の裏側がどこまで事実なのかは分かりませんが、似たようなことは現実に行われているのでしょう。
本書『未亡旅団』でテロリストとして描かれているのは、チェチェン紛争で夫や家族を失った女性たちだけからなる組織である「黒い未亡人」と呼ばれる組織で、実在の組織だそうです。
こうした組織が現実に存在し、テロ行為を行っているのが現実の世界であるということが目の前に示されるのです。
未成年者や、夫や家族を失った女性たちがテロリストとして闘っているという実際の世界の現実がテーマなので、話は重く、決して痛快活劇ではありません。
しかし、作者の筆力はそうした重みをも弾き飛ばす勢いで展開します。アクション小説としての面白さはこれまでにも増しています。
更には警察内部の反特捜部勢力である「敵」との戦いも、より熾烈でサスペンスフルなものになってきています。
付け加えますと、物語が内包している龍機兵そのものにまつわる謎や、秘密のかたまりのような沖津旬一郎特捜部長の背景についてはまだ何も語られてはいません。
まだまだ解き明かされるべき謎は山積しているのです。今後の展開が楽しみな作品です。
本書『機龍警察 暗黒市場』は、『機龍警察シリーズ[完全版]』第三弾の長編のアクション警察小説です。
前巻の『機龍警察 自爆条項』ではライザ・ラードナーの過去が語られましたが、今回はユーリ・オズノフが中心とななっています。
警視庁との契約を解除されたユーリ・オズノフ元警部は、旧知のロシアン・マフィアと組んで武器密売に手を染める。一方、市場に流出した新型機甲兵装が“龍機兵”の同型機ではとの疑念を抱く沖津特捜部長は、ブラックマーケット壊滅作戦に着手した。ロシアの歴史と腐敗が生んだ最悪の犯罪社会に特捜部はどう立ち向かうのか。吉川英治文学新人賞に輝く世界標準の大河警察小説。警察官の魂の遍歴を描く、白熱と興奮の第3弾。( 上巻 : 「BOOK」データベースより)
日本のどこかでロシアン・マフィアによる武器密売市場が開かれようとしている。大物マフィアのゾロトフと組んだユーリは、バイヤーとして参加を許された。その背後で展開する日本警察と密売業者との熾烈な攻防。渦中のユーリは自分とゾロトフとの因縁の裏に、ロシアの負う底知れぬ罪業が隠されていたことを知る。時を超えて甦るモスクワ民警刑事の誇り―至高の大河警察小説、運命の影と灯火の第3弾。( 下巻 : 「BOOK」データベースより)
武器密売の国際的ブラックマーケットを内偵中であった警視庁組織犯罪対策部の安藤巡査部長が、その死と引き換えに、日本で新型機甲兵装のマーケットが開かれるらしいとの情報をもたらした。
当然、警視庁特捜部が乗り出すことになるが、何故かユーリ・オズノフ元警部は契約解除になっていて、残りの二体で対処することになるのだった。
本書『機龍警察 暗黒市場』前半で語られるユーリ・オズノフの物語とは、モスクワ第九十一民警分署刑事捜査分隊操作第一班の物語です。
この班は、腐敗したロシア警察の中でも清廉さを謳われて「最も痩せた犬達」と呼ばれた警察という職務に忠実であろうとする男達で構成されていました。
誰からも慕われた警察官の父を持つユーリにとって、この職場は天命とも言える職場であり、警察官としての自分を最大に生かせる職場でもありました。その職場で起きた悲劇、それが現在まで続いているのです。
後半は現在の日本に戻り、ブラックマーケット壊滅作戦が語られます。この描写は相変わらずに十分な迫力を持って読者に迫ってきます。
少々出来過ぎな感じがしないでもありませんが、そうした思いを越えた迫力で物語は展開されるのです。
十分に練られたストーリーは綿密に計算された人物造形と併せて物語に深みと厚みを感じさせてくれます。
ただ、これまでの三作の中では一番感傷的な物語とも言え、その点が弱点と思う人もいるかもしれません。
しかしながら、物語はそうした疑問点をものともしない筆致で進みます。
SF的な設定は単に一つの道具として考えれば、この手の物語が苦手な人でも十分面白いと思ってもらえるでしょう。それほどに力強く、面白い物語です。