紹介作品

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子母澤 寛 雑感

子母澤寛という人の作品では「勝海舟」が有名ですが、年代によっては「新選組始末記」「新選組遺聞」「新選組物語」の「新選組三部作」の作者としての方が有名かもしれません。更に言えば、勝新太郎主演の映画「座頭市」の原作「座頭市物語」の作者でもあります。ただ、映画の座頭市は「座頭市物語」のそれとは殆ど別物語といった方が良いそうです。他にも初期の股旅物を中心として多数の作品がありますが殆どは手に入らないようです。

私は「父子鷹」「おとこ鷹」「勝海舟」の三冊しか読んではいませんが、少なくともこの三冊の面白さは折り紙つきです。「父子鷹」「おとこ鷹」は勝海舟の父親の勝小吉の物語で、時代としては新潮文庫全六巻の「勝海舟」の第一巻目の大半と重なります。勿論主役が異なりますので話も違うのですが。この勝麟太郎の父親勝小吉の物語が無類に面白いのです。

子母澤寛という人は北海道の出身ですが、勝海舟親子を描く上記三冊は、江戸は本所界隈(勝家は現代のJR錦糸町の駅近くらしい)の情景描写が素晴らしいのです。描かれている本所の雰囲気を味わうだけでも一読の価値ありと思うほどです。また、小吉や麟太郎、その周りの人たちの会話がまた小気味よく、実に楽しいひと時を持てると思います。

映像化作品としてはNHK制作の1974年の大河ドラマ「勝海舟」や1990年の「日本テレビ年末時代劇スペシャル」がありますが、両作品とも途中で主役が交代しているからでしょうか、共にDVD化されていません。「父子鷹」が市川右太衛門、北大路欣也の親子共演作品として、それもVHSであるくらいでした。

[投稿日] 2015年03月18日  [最終更新日] 2015年7月8日
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おすすめの小説

明治維新を描いた作家一覧

歴史小説作家であれば殆どの人は各々の視点で明治維新を描いておられその数は膨大なものになります。個人的感想で面白そうなものを抽出しています。私の未読のものもあります。
司馬 遼太郎
勝海舟」とこの人の「竜馬がゆく」を読めば明治維新の骨組みは分かるのではないでしょうか。その上に「坂の上の雲」まで読めば、明治の政治体制の確立されるまでを知ることになります。司馬遼太郎で言えば他に「燃えよ剣」で新選組を知り、「最後の将軍」「歳月」「世に棲む日日」「花神」等で江藤新平、高杉晋作、吉田松陰、大村益次郎その他が描かれています。この人も挙げればきりがありません。
津本 陽
竜馬 」「勝海舟」「巨眼の男」など、坂本竜馬、勝海舟、西郷隆盛と明治維新期の人物を描いた作品が多数あります。なお、短編集「明治撃剣会」は、明治時代の剣術家の悲哀を丁寧に描写してある短編集です。
山田 風太郎
警視庁草紙」は、川路利良大警視が率いる新生警視庁に元南町奉行駒井相模守率いる元江戸南町奉行所の面々がちょっかいを仕掛ける、伝奇小説です。
池波 正太郎
この人も、「西郷隆盛」や「人斬り半次郎 幕末編・賊将編」など、明治維新を題材にした多数の作品を書かれています。
海音寺 潮五郎
「」  「西郷隆盛」(朝日新聞社 全九巻)は「西郷隆盛を中心に幕末動乱期を描いた日本史伝文学の最高峰」と言われますし、他にも「西郷と大久保」等の西郷隆盛研究は素晴らしいそうです。「幕末動乱の男たち」など、明治維新期と限定しても多数の作品があります。未読です。
早乙女 貢
「會津士魂」(集英社文庫 全十三巻)は、「会津藩主従がなぜ朝敵の汚名を被らねばならなかったか」を描く大河歴史小説で、第23回吉川英治文学賞を受賞しています。未読です。
浅田 次郎
壬生義士伝」「輪違屋糸里」「一刀斎夢録」の新選組三部作は、「泣かせ屋」の名の通り、これまでの新選組の捉え方とは異なり、非情な武士の世界なのですがその底に豊かな人情味を持った物語として仕上がっています。さすが浅田次郎と思わせる面白い本です。
杉本 章子
東京新大橋雨中図」や「名主の裔」など、明治維新期の世相を一般庶民の生活に根差した眼線で描写している作品です。

読み応えのある時代小説作家

多数ある作品の中から選び出すことは不可能です。近年の作者を中心に選んでみました。
山本 周五郎
伊達騒動の原田甲斐を描いた「樅ノ木は残った 」など、文学性の高さや物語そのものの面白さなど、時代小説を読む以上は必ず通らなければならない作家だと思います。反面、とても読み易い作品も多数書かれています。
葉室 麟
10年後の切腹を受け入れ、そのことを前提に藩譜を記す日々を送る戸田秋谷と若き侍檀野庄三郎の物語である「蜩の記」は直木賞を受賞している作品で、清冽な文章が潔い武士の生き様を描き出しています。
藤沢 周平
引退したとある藩の元用人が藩の紛争に巻き込まれていくお話の「三屋清左衛門残日録」は藤沢周平の代表作の一つなのですが、定評のある情景描写と共に主人公の生き方が心を打ちます。他にも、多数の作品があります。
朝井 まかて
恋歌」は、樋口一葉らの師である歌人中島歌子を描いた作品です。正面から武士を描いた作品ではなく、ひとりの女性の、天狗党に参加した夫への恋物語ではありますが、凛とした主人公の生き方は男も女もありません。本屋が選ぶ時代小説大賞2013及び第150回直木賞を受賞しています。
青山 文平
白樫の樹の下で」を始めとする作品群は、侍が侍として生きる姿を描き出していて、清廉な感動が生まれます。
高田 郁
全ては人のために生きた関寛斎とその妻あいの愛情あふれる物語である「あい」は、心の奥に爽やかな感動をもたらしてくれると思います。
海道 龍一朗
真剣」は、剣聖と呼ばれた上泉伊勢守信綱の宝蔵院胤榮との戦いに至るまでを描いた剣豪物語。読んでいる時間を忘れる程に引き込まれた作品です。