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志水 辰夫 雑感

この作家の本を読んだきっかけはもはや覚えていません。

それ頃に読んでいた本と言えば、SF小説、推理小説が殆どで、ハードボイルド小説もハメットとかスピレインといった外国モノばっかりだったのです。ところが、この人の本を読んで、日本人の手でこれほどの物語が書けるのか、という新鮮な驚きを覚えたことだけが印象に残っています。

その本が「飢えて狼」だと思っていたのですが、あらためて調べてみたところ「裂けて海峡」だったようです。というのも、その最初に読んだ本の最後の文章が「気障(きざ)」と言うほかない言葉だったのです(後記参照)。こんなきざな文章を書く人が居るのか、という思いと、その文章がその物語の末尾として見事というほかなく、強烈な印象を残していたのです。

飢えて狼」「裂けて海峡」「背いて故郷」が三部作と言われていたと思うのですが、他に「あっちが上海」「尋ねて雪か」などもあります。

近年、志水辰夫は時代劇宣言をしたらしく、時代物ばかりを書いておられるようです。この作品群がまた面白い。ハードボールドな世界が江戸時代を背景に繰り広げられるのです。この人の作品はハードボイルドとは言っても、北方謙三の短文をたたみかける乾いた文体とは異なり、実に叙情的なのです。シミタツ節と言われるその文章が、時代小説として繰り広げられています。

この人の作品は派手なストーリー展開は初期の作品を除いてはそんなにはありません。したがって、少々とりつきにくい側面があるかもしれません。しかし、読了したときには必ず虜になっていると思います。

お勧めです。

[投稿日] 2015年03月18日  [最終更新日] 2015年4月12日
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おすすめの小説

おすすめのハードボイルド作家(日本)

以下の各作品はハードボイルドという括りが無くても、お勧めの作品群です。
北方 謙三
現在の日本のハードボイルド作家の第一人者でしょう。「「ブラディ・ドール シリーズ 」に代表される作品群何時までも色褪せません。
藤原 伊織
テロリストのパラソル」など、その文章は格調高く、この作家の作品はハードボイルドという絞りがなくても面白い作家の上位に来ると思います。
東 直己
「ススキノ探偵シリーズ」では、札幌はススキノを舞台に饒舌な「俺」が活躍します。
大藪 春彦
日本のハードボイルドは、この人の「野獣死すべし」から始まりました。
大沢 在昌
新宿鮫」では、キャリアの刑事が活躍します。エンタテイメントという言葉はこの人のためにあるのかもしれません。
三好 徹
天使シリーズ」は、短編の積み重ねですが、30年も前に読んだので今の時代に合うか、若干心配です。
平井 和正
ウルフガイシリーズ」は40年近くも間に読んだ本だけど、色褪せてない、と思います。

おすすめのハードボイルド作家(海外)

他にも多数の作家がいるのですが、とりあえず私が読み、印象の強かった作家だけを挙げています。また、挙げている作品はあくまで参考です。
ダシール ハメット
サム・スペードが活躍する「マルタの鷹」から始まるシリーズは、ハードボイルドの名作中の名作です。あくまで客観的に、ときには暴力的なその文体は、この後に続く多くの作家に影響を与えました。この人を抜きにしてはハードボイルドは語れません。
レイモンド・チャンドラー
ハメットと同じく客観的描写に勤めるその文体はハードボイルドの古典です。「ロング・グッドバイ」では主人公のフィリップ・マーロウが行動し、事件の裏を探り出します。
ロバート・B・パーカー
饒舌な私立探偵スペンサーとそれを助ける黒人の大男ホークが様々な問題を時には暴力をも使って解決します。男の「誇り」を生き方で示すスペンサー、その矜持を認めつつ自らも自立する恋人のスーザン。この二人の会話もまた魅力的です。このシリーズの中でも「初秋」は少年とスペンサーの心の交流を描き必読です。
ジェイムズ・クラムリー
酔いどれの誇り」や「ダンシング・ベア」など、翻訳の妙なのかもしれませんが、その文章は文学作品のようです。
ローレンス・ブロック
八百万の死にざま」に代表されるマット・スカダー・シリーズでは、酔いどれ探偵が活躍します。
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