イラスト1
Pocket

夏川 草介 雑感

夏川 草介』のプロフィール

 

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同書で2010年本屋大賞第2位、映画化もされた。他の著著に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『本を守ろうとする猫の話』がある。
引用元:夏川草介 | プロフィール | Book Bang -ブックバン-

 

夏川 草介』について

 

この夏川草介作家には2021年05月現在、シリーズ作品としては『神様のカルテシリーズ』が0から3までの四冊と、『新章 神様のカルテシリーズ』と銘打たれた新シリーズが一冊出ています。

この『神様のカルテシリーズ』の一巻目は本屋大賞の二位を受賞していますし、各巻とも数十万部の発行数を誇っていますから、このシリーズの面白さは保証済みと言えるでしょう。

ほかに医療関係の作品として『神様のカルテシリーズ』で書くには重すぎるとして別に書かれた『勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~』という終末医療を扱った作品があり、さらに現在進行のコロナ診療の最前線の姿を描いた『臨床の砦』という作品があります。

医療関係以外の作品として、『本を守ろうとする猫の話』という作品は「本」の大切さを訴えた作品であり、またほかに民俗学を通して学ぶこと、生きることの意味を考える『始まりの木』という長編小説があります。

 

このように、医療関係以外の作品も書かれている夏川草介という作家さんですが、その根底に流れる“生きる”ということの大切さを様々なかたちで訴えておられるようです。

そしてそのためには読者が楽しく読める作品である必要があるとして、医療の重く、暗くなりがちな現場も、ユーモアを交えた希望の持てる作品として仕上げられているようです。

こうして、夏川草介という作家の特徴でもあるユーモラスな、そして美しい信州の風景も交えながらの小説は映画やテレビドラマ、コミックといったほかのメディアでも取り上げられるようになっています。

 

先にも述べたように夏川草介という作家は医療関係とは異なる『始まりの木』のような、民俗学をテーマにした作品も書かれています。

そこでは、学問をするということの意味、使命感を持ってしなければ堕落してしまう学問の大切さを、古谷准教授の口を借りた夏川草介という作者の叫びが示されています。

 

 

そして、コロナ禍の現在、『臨床の砦』という作品が、緊急出版されました。

報道で見聞きするコロナ診療の第一線の様子がリアルに描き出されています。

テレビのニュースで見聞きする以上の緊迫した医療現場の様子がそこにはありました。医療には素人の私にも文字通りに命を懸けて治療にあたっておられる関係者の努力が描かれています。

 

 

ところで、夏川草介というペンネームは、著者の大好きな作家の名前からできているそうです。

つまりそれぞれに夏目漱石、川端康成、漱石の「草枕」、芥川龍之介から一文字ずつ取っているとのことで、著者自身、こうしたウィットのあるお医者さんなのでしょう。

このように夏川草介という作家自身がかなりの本好きのようで、だからこそ『本を守ろうとする猫の話』のような、本を読むことの大切さを訴えようとする作品を書かれたのでしょう。

心地よい感動と、読後感をもたらしてくれるこの作者はお勧めです。

 

 

お医者さんでありながら小説をもかかれている人と言えば、森鴎外もいますがこの人は別とすると、まずは「北杜夫」の名前が挙がると思います。

次いで、「渡辺淳一」、そして今の一番は『チーム・バチスタの栄光』などのミステリーが人気の「海堂尊」でしょうか。

他にも久坂部羊中山祐次郎大鐘稔彦知念実希人などいった人たちの名が浮かびます。

このほかにちょっとネットを見ると「帚木蓬生」、「加賀乙彦」、「永井明」などの名前が挙がります。これらの他にもいらっしゃるでしょう。

 

 

ともあれ、そんな中でも夏川草介という作家の作品は私が一番好む作品を書かれているようです。

今後の作品を期待したい作家さんです。

[投稿日] 2015年04月15日  [最終更新日] 2021年5月27日
Pocket

おすすめの小説

読後感が爽やかな作家

『神様のカルテ』といえばテーマの割に読後感の爽やかさもあると思います。そこで、似たような、とは言いませんが、読後感の爽やかな作品を発表されている作家を集めてみました。
佐藤 多佳子
物語の中に息づく登場人物たちの人物造形がうまく、文章のタッチも軽やかでさわやかな読後感をもたらしてくれます。とくに「しゃべれどもしゃべれども」は心温まる物語で、「一瞬の風になれ」は陸上スポーツに打ち込む若者を描き、さわやかな汗を感じることができます。
小川 洋子
この作家は「博士の愛した数式」しか読んだことは無いのですが、それでも80分しか記憶が持たない数学者と家政婦とその家政婦の息子が織りなす物語は、心地よい感動をもたらしてくれました。
有川 浩
しっかりした構成と、普通の言葉でメリハリよく語られる文章は、とても読み易い作品となっています。「三匹のおっさん」や「阪急電車」など、ユーモアに満ちていながら、小さな喜びが待っています。
重松 清
あすなろ三三七拍子」のようにコミカルなタッチの作品もあれば、「エイジ」のような、中学2年生という多感な青春のひと時を、鮮やかに切り取った作品もあります。
三浦 しをん
非常に読み易い作品を多く書かれています。そして、その作品では様々な職種の人達が、それぞれの世界でもがき、呻吟するさまが、底抜けに明るい文章で、コミカルに描き出されているのです。「舟を編む」では辞書作りの世界での話が、「まほろ駅前多田便利軒」では便利屋が、「神去なあなあ日常」では林業の世界が舞台となり、極上の物語が繰り広げられています。多くの作品が映画化され、好評を博しています。

関連リンク

医師・夏川草介が描く大学病院の実相 『新章 神様のカルテ』を著者が語る
栗原一止は大学院生の身分でありながら、第四内科第三班の実質的な班長を務めている。ベッドの差配といった事務仕事も兼務し、医療研究に従事し、後輩を教育し……。
読書のいずみ-座・対談 夏川 草介さん(医師・小説家)
いま夏川さんは医者であり作家という二足のわらじで生活されていますが、それはとても大変なことだと思います。どのように両立をされているのでしょうか?
「医者の努力で患者が治った」という物語の嘘くささ『神様のカルテ0』夏川草介に聞く1
先日、上橋菜穂子『鹿の王』が第3回医療小説大賞を受賞した。ますます注目度が上がる医療小説というジャンルの中で、抜群の知名度と人気を誇っているのが、櫻井翔主演の映画化作品も記憶に新しい、夏川草介『神様のカルテ』だ。
座・対談 「医師として伝えたい『希望』」夏川 草介さん(医師・小説家)
『新章 神様のカルテ』(小学館)は 4年ぶりの最新作ということですが、新章を書くまでの経緯などをお聞かせください。
「戦い続ける病院を休ませないと崩壊する」 医師・作家、夏川草介が語るコロナ治療の現場
映画、ドラマにもなったベストセラー小説『神様のカルテ』の著者・夏川草介さんは、長野県の感染症指定医療機関に勤める内科医でもある。