吉川 英梨

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本シリーズは、原麻希という名の女性警察官を主人公とする、長編の警察小説です。

シリーズの途中で所属を変えるたびにシリーズの名前も変わりながら続いている、小気味いい小説です。

 

女性秘匿捜査官・原麻希シリーズ(2017年09月25日現在)

  1. アゲハ
  2. スワン
  3. マリア
  1. エリカ
  2. ルビイ

警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希シリーズ(2021年03月05日現在)

  1. 警部補・原麻希
  2. 5グラムの殺意
  3. 通報者
  1. 氷血
  2. 蝶の帰還

警視庁捜査一課八係 警部補・原麻希シリーズ(2021年03月05日現在)

  1. レッド・イカロス
  2. イエロー・エンペラー

 

シリーズ名も変化していますので、本稿のタイトルも『女性秘匿捜査官・原麻希シリーズ』から『原麻希(ハラマキ)シリーズ』へと変更しました。

ただ、本サイトの他の個所での記載は『女性秘匿捜査官・原麻希シリーズ』のままとしておきます。

 

本『原麻希(ハラマキ)シリーズ』の主人公の原麻希は、警視庁鑑識課に勤務する警察官です。しかし、それは第一巻現在の話であり、鑑識課に勤務する以前は警視庁捜査一課に在籍していました。

第一話から、かつて自分が事件として関係したテロ集団「背望会」の存在が示唆され、このシリーズを通しての敵役として存在します。

とはいっても、このシリーズは途中から『警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希』シリーズとして展開されます。

鑑識課から、以前勤務していた警視庁捜査一課に戻り、今度は警部補として女性だけの捜査班の一員として活躍することになります。

その後は警視庁捜査一課八係へと異動になっています。

本『原麻希(ハラマキ)シリーズ』はまだ途中までしか読んでいませんので詳しいことは分かりませんが、敵役としての「背望会」も五巻までにはかたがついて、「女性犯罪」捜査班が誕生する第六巻からは、ストーリー構成も代わったシリーズとなると思われます。

その途中まで読んだだけの感想ではありますが、このシリーズは、警察小説としてまず挙げられる佐々木譲作品の、例えば『警官の血』のような、警察官という存在そのものを緻密に書きこみ、人間としての警察官を重厚に描写する小説とは異なります。

言わば、痛快警察小説とでも呼ぶべきものであり、細かな設定の雑さなどには目をつぶって読むべき作品だと思われます。

 

 

また、誉田哲也の『姫川玲子シリーズ』の主人公のように、自らの暗い過去を抱えながら、個性的な脇役と共に陰惨な事件の解決に突き進む物語でもありません。

姫川玲子の物語は、刑事としてのセンスにも助けられ、事件の裏に潜む人間模様のほんの少しのほころびから事件解決の糸口を見つけますが、原麻紀の場合、物語自体の持つ勢いの中で、少々の齟齬は気にせずに、一気に終盤まで突き進む印象です。

 

 

ときにはユーモラスに展開され、家庭内の問題をも抱えながら、常に旦那や娘の心配をしながら、刑事時代の捜査に未練を残しつつ、鑑識課員としての職務にまい進する主人公の原麻紀です。

本『原麻希(ハラマキ)シリーズ』は、細かいことは無視しながら、物語の流れに乗っていけば、それなりの面白さを得ることができるシリーズだと思います。

 

ちなみに、このシリーズはフジテレビ系列で「女秘匿捜査官 原麻希」としてテレビドラマ化もされています。主演の原麻紀は瀬戸朝香が演じており、他に吹越満や石黒賢らがわきを固めています。

しかし、2012年7月に放映された後、その後は続編の放映はされていないようです。2021年3月現在でもDVD化がされていないところを見ると、あまり評価が高くなかったのかもしれません。

[投稿日]2017年09月25日  [最終更新日]2021年3月5日
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女秘匿捜査官 原麻希 アゲハ - フジテレビ
警視庁捜査第一課の原麻希(瀬戸朝香)は、係長の妹尾浩輔(高杉亘)から呼び出され、現場へ急ぐ。麻希が到着するとそこには、黒焦げの遺体があった。現場検証をしながら、麻希は6年前の事件を思い出していた。

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