米澤 穂信

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東京創元社

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真実の10メートル手前 出版社: 東京創元社 (2015/12/21); 単行本: 297ページ
高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める…。太刀洗はなにを考えているのか?滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執―己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。日本推理作家協会賞受賞後第一作「名を刻む死」、本書のために書き下ろされた「綱渡りの成功例」など。優れた技倆を示す粒揃いの六編。(「BOOK」データベースより)

太刀洗女史が活躍する六編の物語が収められた短編推理小説集で、第155回直木賞候補になった作品です。

「真実の10メートル手前」
行方不明になった一人の女性を、彼女の残した一言だけをもとにその所在を探し当てる話です。
「正義漢」
吉祥寺駅で起きた人身事故を描いた16頁しかない作品です。
「恋累心中」
三重県恋累で起きた高校生の心中事件において、凄腕であったその女性記者は心中事件に隠された事実を暴き出すのだった。
「名を刻む死」
田上良造という男性の孤独死に隠された真実を見つけ出す太刀洗だった。
「ナイフを失われた思い出の中に」
蝦蟇倉市で十三歳の少年が三歳の女の子を刺し殺した事件の取材をする太刀洗が、隠された真実を暴きだします。
「綱渡りの成功例」
台風による水害で孤立してしまった戸波夫妻の救出劇には夫妻の隠された思いがあった。

主人公はフリージャーナリストの太刀洗万智という女性で、彼女が探偵役となって物語は進みます。ほとんどの物語は、特定の個人に関連する何らかの事件があって、それなりの結論が出そうという時に、太刀洗だけはその個人の発した「一言」を頼りに真実を暴き出す、という構成です。

そのロジックが実に小気味いい。彼女の言うロジックが正しいものかどうかの検証までは、私は行いません。例え表面的であったとしても、物語の流れの中で読者を説得できるロジックであればそれでよしとするのです。ということで、本書で太刀洗が述べるロジックが正しいのかどうかは不明です。

太刀洗万智という女性は、もともと米澤穂信の『さよなら妖精』という青春ミステリ小説の登場人物だったのだそうです。古典部シリーズ3作目として書き始められた『さよなら妖精』が、出版レーベルの読者層とのかい離という事態に陥り、他社から出版されることになったとのことです。( by ウィキペディア : 参照 )

その後〈ベルーフ〉シリーズとして『さよなら妖精』の10年後の太刀洗万智の物語『王とサーカス』が出版され、その続編として本書『真実の10メートル手前』に至ることになります。

本書に魅かれる一番の理由は、太刀洗万智というキャラクターの持つ魅力に加え、先にも書いたように彼女の行う推理、その考察の際のロジックの小気味良さにあると思います。

本書より前に太刀洗万智という女性が登場する『王とサーカス』という作品を読むと、太刀洗万智という女性は記者という職業に真摯に向き合い、単に事実を伝えるという行為の持つ真の意味を考察しています。

そうした主人公の、事柄の真の意味を見抜く力が本書でも発揮されており、それぞれの話で小さな事柄からその事実に隠された意味を推し量り、事件の解決に結びつけるのです。

そうした様が読者にうけ、支持を得ているのだ思われます。

長岡弘樹教場 という作品は、警察学校を舞台とした作品です。米澤穂信作品と同様に、日常に潜む謎をテーマとしたミステリー小説として、警察学校内部に対するトリビア的興味は勿論、貼られた伏線が回収されていく様も見過ごせない作品です。

[投稿日]2017年07月15日  [最終更新日]2017年7月15日
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本

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【書評】『真実の10メートル手前』米澤穂信著 - 産経ニュース
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米澤穂信氏は、今やミステリー界のエース的存在である。著者は10年以上にわたり、傑作・話題作を書き続け、その実績は申し分ない。

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