月村 了衛

イラスト1
Pocket

新刊書

文藝春秋

写真は Amazon にリンクしています。

楽天Booksは ガンルージュ [ 月村了衛 ] へ。


韓国の大物工作員キル・ホグン率いる最精鋭特殊部隊「消防士」が日本で韓国要人の拉致作戦を実行した。事件に巻き込まれ、人質となってしまった中学1年生の祐太朗。日本政府と警察は事件の隠蔽を決定した。祐太朗の母親で、かつて最愛の夫をキルに殺された元公安の秋来律子は、ワケあり担任教師の渋矢美晴とバディを組み、息子の救出に挑む。因縁の関係にある律子とキルの死闘の行方は、そして絶体絶命の母子の運命は―。(「BOOK」データベースより)

この作者の作品である『機龍警察』の持つ重厚なイメージを持って読むと、全く裏切られます。本作品は、ときにはコミカルに、ときにはハードに、またちょっとした遊びもある、まさに娯楽に徹したアクションエンターテインメント作品というべき作品なのです。

秋来祐太郎と神田麻衣は、韓国の特殊部隊がとある韓国要人を拉致する現場を目撃したために共に誘拐されてしまいます。そこで祐太郎の母親秋来律子と彼らの教師である渋矢美晴とが救出に向かう、というのが大まかな物語の流れです。

普通の母親と教師が、高度な訓練を受けた特殊部隊を相手に立ち回りを繰り広げようというのですから、普通の物語であるわけがありません。当然のことながらこの二人が「普通の一般人」であるわけがないのです。

即ち、祐太郎の母親の秋来律子は、元公安の、それも凄腕の捜査員であったという過去を持っていて、渋矢美晴は元ロックシンガーであり、祐太郎らの体育の教師であって、かつての彼氏である敏腕刑事から教わった格闘術で立ち向かいます。

こうした設定からも分かるように、本書は単純にストーリーに乗っかって楽しむべき類の作品です。いくら格闘術を習っていたとしても、一般素人の女性が高度な訓練を受けた特殊部隊隊員を相手に闘えるわけがないなどと、当たり前の感想を持ったりしてはいけないのです。

あくまで、アクションエンターテインメントとして素直に物語を楽しめばよく、そうすればかなりの爽快感を持って読了することができると思います。

そういうゆとりを持って読み進めると、本書は登場人物のキャラクターなどかなり書きこまれていて、感情移入しやすい物語であることはすぐにわかると思います。実際、316頁の新刊書という決して薄くはない本ではあるのですが、この手の作品の常として書会話文が多く、改行も多用してあるところから、かなり早いペースで読み終えることができました。

アクションエンターテインメントということで私の読書歴から既読作品を振り返ってみると、やはりまずは 西村寿行の名があげられると思います。荒唐無稽な物語ではありながら、骨子がしっかりとしているためか純粋にエンターテインメントを楽しむことができる作品が多数あるのです。中でも突飛ではありますがアクション性を重視すると鯱シリーズということになるでしょう。仙石文蔵をリーダーとする天星、十樹、関根という四人の荒唐無稽なスーパーヒーローが活躍し、更にエロス満開のサービス付きです。『赤い鯱』を第一作とし、全十一巻になるシリーズで、その面白さは折り紙つきです。

荒唐無稽さという側面を重視し、ヒーローが活躍する小説ということに限定すると 楡周平Cの福音を思い出します。 大藪春彦が作り出した伊達邦彦や朝倉哲也などのヒーローを彷彿とさせてしまう朝倉恭介と川瀬雅彦という二人を主人公とする、Cの福音を第一作とする全六巻からなるアクション小説です。『Cの福音』に続く『クーデター』と読み進んでいるのですが、次第に面白くなっている感じがします。

[投稿日]2017年04月06日  [最終更新日]2017年4月6日
Pocket

おすすめの小説

おすすめのアクション小説

エンターテインメント性の強い、疾走感に満ちたアクション性が強い小説です。種々の作品をバラエティ豊かに集めてみました。
亡国のイージス ( 福井 晴敏 )
日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞を受賞しています。ミニ・イージスシステム搭載ミサイル護衛艦「いそかぜ」を自衛隊員と共に乗っ取った北朝鮮工作員に対し、仙石恒史先任伍長が叩きを挑みます。
ガダラの豚 ( 中島らも )
この作品をアクション小説と言い切っていいものか、非情な疑問はありますが、少なくとも暴力に満ちた作品ではあります。文庫本で1000頁近くもある大作です。
魔獣狩り ( 夢枕 獏 )
エロスとバイオレンスといえばまずこの人でしょう。初期の夢枕獏の作品で、「サイコダイバー」シリーズとも呼ばれます。伝奇及び格闘小説の融合したような物語です。何も考えずにただただ小説世界に浸るべき作品でしょう。
ファントム ( D・R・クーンツ )
アメリカのとある町の住民が居なくなった。「太古からの敵」という正体不明の何者かを相手に戦いが繰り広げられます。モダン・ホラーの代表格として人気を博しました。ノンストップホラーサスペンスです。
グレイヴディッガー ( 高野 和明 )
主人公八神俊彦というワルのある一夜の逃避行を描いた作品で、その疾走感は久しぶりに読みました。「」ジェノサイドは、2012年版の「このミステリーがすごい!」第一位を獲得した作品で、若干アクション性は控えめですが、スケール感は増大しています。ただ、若干の問題が・・・。
本

関連リンク

『ガンルージュ』月村了衛 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
「あたしたち、最強の相棒。」韓国最凶の特殊部隊が日本に潜入。迎え撃つは、元公安のシングルマザー&女性体育教師!?
群馬の温泉郷が戦場と化す!月村了衛『ガンルージュ』 | ダ・ヴィンチニュー
月村了衛の新作『ガンルージュ』(文藝春秋)はこうしたアラサー女性の倦んだ日常から始まる。しかし『機龍警察』(早川書房)をはじめ冒険小説の熱き魂を込めた作品を書き続ける月村のこと、退屈な日常話で終わるわけがない。
『ガンルージュ』発売 - 月村了衛の月録
小説家・月村了衛の公式ブログ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です