“算盤侍”唐木市兵衛は、公儀十人目付筆頭片岡信正の依頼で、下総葛飾を目指していた。信正の配下返弥陀ノ介は親友市兵衛の出立に際し、伝言を託す。葛飾近くの貸元に匿われている女宛だった。道中、市兵衛は貸元が人徳者だったが三月前に暗殺されたと知る。跡目を継いだのは美人の三姉妹で、市兵衛はその手下を偶然助けたことから、縄張り争いに巻き込まれ…。(「BOOK」データベースより)
風の市兵衛シリーズ第十三弾です。
今回の物語は、痛快小説のど真ん中を行く王道の痛快小説でありました。対立する二つの一家の一方は昔ながらの任侠道を大事にしている一家であり、もう一方は役人と結んで無理を承知の横車を押すヤクザもの。ましてや任侠道を大切にする一家は、先代が殺された後美人三姉妹が一家を切り盛りしているというのですから、市兵衛がどちらに力を貸すかなど、問うまでもありません。
今回の依頼は、下総葛飾のとある寺にいるらしい、普化僧となっている息子の消息をたずねて欲しいというものでした。また、併せて返弥陀之助からも、葛西の吉三郎親分のもとにいると思われる、かつての敵で異国の剣の使い手である「青」の様子を見てきて欲しいとの頼みもありました。
ところが、葛西の吉三郎親分は何者かの手によって殺されており、その後を美人三姉妹が継いでいたのです。この一家こそが任侠道を大切に守ってきた一家であり、対立する一家に狙われていたのです。
本来の、普化僧になっているらしい息子の消息を確かめる仕事をこなす市兵衛。それと同時に、弥陀之助と青との恋模様があり、そして美人三姉妹と市兵衛との絡みもあり、痛快小説としては盛りだくさんの内容でありながら、更にそのそれぞれを丁寧に描写しているのはいつものこの作者の物語です。
高倉健の任侠映画を思わせる舞台設定と、