仇敵である公義御目付・鳥居耀蔵と米仲買商らの悪事を天下に曝し、庶民の喝采を浴びた乱之介ら天保世直党が江戸に帰ってきた!蘭医・松井万庵を冤罪で陥れようとする耀蔵の悪意に気付いた乱之介は、捕らわれた万庵を救おうと計画を練る。一方、乱之介と不思議な縁で結ばれた好敵手・目付の甘粕孝康は乱之介の驚くべき過去を探り当てた。熱い情けと深い契りで結ばれた疾風の義賊、参上。(「BOOK」データベースより)
目次
諸 六文銭 | 一之章 明き場の原 | 二之章 大江戸町火消し | 三之章 天下太平 | 四之章 一斉検挙 | 四之章 果たし状 | 四之章 小塚っ原の襲撃| 結 花の宴
前巻で六千両という大金をてにして江戸を逃れて旅に出ていた「天保世直党」の連中だったが、途中、渡良瀬川の近くでヤクザの出入りから逃れてきたと思われる一人の渡世人から、最後の頼みを受け、再び江戸へと舞い戻るのだった諸 六文銭)。
一方、甘粕孝康は、天保世直党の背景を探るために、乱之介の過去を調べる作業に乗り出していた(一之章 明き場の原)。
また、定町廻りの大江勘句郎とその手先の文彦は、愛宕下の芝の町火消し、め組の頭取・光七のもとを訪れ、蘭医の松井万庵を痛めつける相談をしていた。その松井万庵のもとにいる助手の秋五こそ、乱之助が伝言を頼まれた男であり、乱之介は、秋五の兄の最後を告げるのだった(二之章 大江戸町火消し)。
本書では、朱子学の大家・林家出身であるところから、蘭学を毛嫌いする鳥居耀蔵の意を受けた同心の大江や町火消しの光七らが、蘭医の松井万庵を捕縛しようとし、万庵を守ろうとする乱之助らとの対立が主な出来事となっています。
たまたま乱之助らが旅先で最後をみとった男の関係者を、同心の大江らが捕縛しようとし、ここに再び「天保世直党」と鳥居らとの対決が展開される、という都合のいい展開は、まあ、痛快小説のお約束として目をつぶるとしても、他の細かな設定が気になる展開となっていまいた。
例えば、光七は、いずれは頭取お職格としてめ組二百四十人を束ねる火消し中の火消しとして評判だという設定ですが、そうした人気稼業の男が本書に描かれているような非道なことをするのか、という疑問があります。
そうした行いは江戸市民の嘲笑の的にはなっても、男の中の男として人気にはならないと思われるのです。
細かなことではありますが、こうした点が気になると他の設定までう直には読めなくなってしまうのです。
辻堂魁という人気作家の手になるものとしてはこのまま受け入れるには難ありと言わざるを得ません。
ただ、甘粕孝康が探り出している乱之介の過去の話は、この物語の今後の展開に大きく影響を与えそうで、どのような展開になるのか、続編を読みたいと思います。