田牧 大和

イラスト1
Pocket

文庫

角川書店

写真は Amazon にリンクしています。

楽天Booksは 楽天Books へ。


主人公は来栖家当主の血を引きながら鎌倉の東慶寺でひっそりと生を受けた弥生という娘です。この子をめぐる御家騒動を縦軸とし、各短編で「とんずら屋」への依頼された仕事をこなす様子を横軸として、二重の面白さを持った物語として描き出しています。

この娘が「とんずら屋」という裏稼業を営む「松波屋」にやってきます。そこには弥生の叔母であり、船宿「松波屋」の女将お昌(おまさ)がいます。お昌は「剛毅で強欲」な女傑であって、裏稼業の元締めでもあるのです。また、幼い頃家族を皆殺しにされ、自分一人「とんずら屋」に預けられ、お昌の裏稼業の跡継ぎとして育てられた啓次郎もいました。啓次郎は、幼いころ殺された妹の代わりとも思える弥生を助けることに命をかけています。更に、「とんずら屋」の陸(おか)を受け持つ韋駄天の源次(げんじ)もいました。

弥生の過去は最初は全く描かれていません。物語が進むにつれ、少しずつ明かされていくのです。「とんずら屋」の裏仕事をやり遂げつつ、弥生の周りにはお家騒動の一方からの手が伸びて来ます。弥生の身を守りながら裏稼業をこなしていく仲間たち。その様子がテンポの良い文章で語られていきます。

ただ、本作は特に弥生の情緒面が前面に出過ぎていて、個人的好みから言えば少々煩わしくも感じました。

そんな個人的好みをも押しのけるほどの物語としての面白さがあります。文章もテンポよく、登場人物の書き込みも十分で、物語の中で自由に動き回っている印象です。だからこそ読みやすく、引き込まれるのでしょう。

既に二作目『仇討 とんずら屋請負帖』も出ています。更に続くことを期待したいものです。

とんずら屋シリーズ(2015年04月01日現在)

  1. とんずら屋請負帖
  2. 仇討 とんずら屋請負帖
[投稿日]2015年04月14日  [最終更新日]2015年11月5日
Pocket

おすすめの小説

おすすめの軽く読める時代小説

どちらかと言えば近年にデビューされた、新人の時代小説作家による軽く読める時代小説です。
軍鶏侍シリーズ ( 野口 卓 )
デビュー作の軍鶏侍は、藤沢周平作品を思わせる作風で、非常に読みやすく、当初から高い評価を受けています。
付添い屋・六平太シリーズ ( 金子 成人 )
さすがに日本を代表する脚本家のひとりらしく、デビュー作である本シリーズも楽に読み進むことができる作品です。
濱次シリーズ ( 田牧 大和 )
歌舞伎の世界を舞台にした小粋なシリーズです。他にもいくつかのシリーズを抱えていますが、どれも読みやすく楽しめます。
紀之屋玉吉残夢録シリーズ ( 水田 勁 )
門前仲町の芸者置屋「紀之屋」の幇間である玉吉を主人公とした、軽いハードボイルドタッチの読み易いシリーズです。
風の市兵衛シリーズ ( 辻堂 魁 )
主人公が「渡り用人」というユニークな設定で、痛快と言うにふさわしい、とても読み易いシリーズです。
本

関連リンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です