高嶋 哲夫

イラスト1
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パニック小説としての面白さを十二分にもった小説です。

東京の荒川領域は、「街は川の流れよりも低い位置に広がってい」て、堤防が決壊すればひとたまりもなく壊滅するだろう海抜ゼロメートル地帯である。静岡県牧之原の「日本防災研究センター」に出向している東都大学理工学部地球物理学科の講師・玉城孝彦は気象を専門とし、スーパーコンピュータを使っての台風の発生メカニズム等の研究をしているが、そのシミュレーションは超巨大台風の襲来を描き出した。数日後、中心気圧が820ヘクトパスカルを下回り、最大瞬間風速は80メートルを超えるという超巨大台風が首都東京に襲いかかる。

本書は超巨大台風の襲来に際しての主人公家族の行いを中心とし、自然の脅威とそれに対する行政等の対応を描いている物語です。行政の対応を追いかけている側面ではシミュレーション小説的要素もあるのですが、国や東京都の行動はあくまで二次的であり、物語の背景の一つとして緊迫感を出す役目を担っているようです。

前半は台風が次第に巨大化していく様を描いていて、台風の巨大化にともない読み手の受け取る不気味さも次第に大きくなっていきます。いやでも20年ほど前にわが郷土を直撃し、多大な被害をもたらした台風を思い出してしまいました。

後半は実際に超巨大台風に直面した時の行政の動きを追いながら、主人公家族のありようを描き出しています。

本書はエンターテインメント小説の宿命として、特に台風の規模などはかなりデフォルメされている部分が大きいと思われます。しかし、我が国は、2011年3月11日に未曾有の被害をもたらした東日本大震災を経験しました。そのことから言うと、本書の主人公が言う、自然の前では「何が起こるか分からない」という言葉は大きなとても重く、デフォルメだからとして軽視てはならないと感じられます。

[投稿日]2015年08月09日  [最終更新日]2015年8月9日
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各種パニック小説の一部です。シミュレーション小説というべきものも挙げています。
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