鈴木 英治

口入屋用心棒シリーズ

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寛永寺御上覧試合に東海代表として出場が決まったものの、未だ負傷した右腕が癒えない湯瀬直之進は、稽古もままならず、もどかしい日々を送っていた。続々と各地の代表が決まる中、信州松本で行われた信越予選では、老中首座内藤紀伊守の家臣室谷半兵衛が勝ち名乗りを上げる。だが、江戸では内藤家に仕える中間の首なし死体が発見され、内藤紀伊守の行列を襲う一団が現れた。不穏な気配が漂う中、遂に御上覧試合当日を迎える!人気書き下ろしシリーズ第三十七弾。(「BOOK」データベースより)

口入屋用心棒シリーズの第三十七弾の長編痛快時代小説です。

 

沼里で行われた東海地方予選を勝ち抜いた直之進は、沼里で退治した盗賊の首領から受けた傷が未だ癒えていないままに、近く行われる上覧試合本選へと出場しなければならないのだ。

「秀士館」の医術方教授の雄哲の治療を期待していたものの、雄哲は他出していて不在であり、治療もままならないでいた。そんなときに訪ねてきた新美謙之介の持っていた霊鳴丸という薬を飲んで本選へと臨む直之進だった。

一方、富士太郎は老中首座内藤紀伊守の中屋敷に奉公する中間のものと思われる首なし死体の探索に振り回されていた。

また佐之助は、淀島登兵衛の頼みで内藤紀伊守の警護を頼まれる。普段は四月ほど前の襲撃を防いだ室谷半兵衛を召し抱え、その者に警護を任せているというが、室谷半兵衛は内藤紀伊守の為した理不尽な移封で家禄半減となった遠州浜松井上家の家臣だったのであり、佐之助への依頼にはその室谷の監視もあるということだった。

 

御上覧試合という一大イベントでもう少し物語を続けていくものかと思っていたところ、本巻で試合は終わってしまいます。

代わりに、本書冒頭から不在だった「秀士館」の医術方教授の雄哲は、物語の最後になっても「秀士館」に戻っていません。次巻はこの雄哲不明の謎が軸になるものだと思われます。

ともあれ本書では、直之進は勿論上覧試合を勝ち抜いていきます。天下一の剣士は誰なのかは実際に読んでもらうとして、その試合の様子も読みごたえがあります。

また、それとは別に佐之助の見せ場も作ってあります。かつては互いに仇敵のように闘っていた相手ではありますが、今では死線を越えた者同士の交流があり、繋がりがあるのです。

それに加えて、富士太郎の探索が絡んでくるのもいつものパターンです。

ただ、特に富士太郎の探索の場面は簡潔です。物語の流れの上であまり必要がないからということもあると思われますが、もう少し丁寧に描いて欲しいという印象はありました。

でも、痛快時代小説としてテンポよく読み進めることができる物語です。そして鈴木英治という作家の代表シリーズの一作として、一定水準の面白さは確保できているのです。面白いシリーズであり、作品であるのも当たり前でしょう。

ついでに言えば、本作の四分の一ほどは上覧試合の試合の描写が為されています。このように、剣術の立ち合いのみで見せる物語といえば、 海道龍一朗の『真剣 新陰流を創った男、上泉伊勢守信綱』があります。剣聖と言われた上泉伊勢の守信綱の生涯を描いたこの作品は、求道者の一つのあり方を描いた作品としては最高の作品の一冊だと思います。

[投稿日]2018年05月20日  [最終更新日]2018年5月20日
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