江都一の粋人・佐賀大左衛門の構想によって創設された文武両道の学校“秀士館”。その剣術指南役に就いた湯瀬直之進は、幻の名刀“三人田”の持ち主鎌幸が姿を消したと知り、その行方を追いはじめる。そんな中、南町奉行所の定廻り同心坂巻十蔵の死体が発見された。早々に下手人を捕らえた樺山富士太郎だったが、さらなる殺しの一報がもたらされ…。人気書き下ろしシリーズ第三十三弾。(「BOOK」データベースより)
口入屋用心棒シリーズの第三十三弾の長編痛快時代小説です。
前巻では三人田という刀をめぐり、鎌幸が何者かに狙われ、また富士太郎の屋敷に賊が侵入するなどの事件があったものの、三人田をめぐる猟官騒ぎは一応の決着を見ました。
それから一年後、直之進と佐之助はやっと設立された「秀士館」の剣術指南役として働いており、また直之進には直太郎という跡取りも生まれています。
直之進が「三人田」を返すために旅から帰った鎌幸のもとへ向かうと、鎌幸の家を見張る何者かの眼を感じます。はたして鎌幸の家からの帰りに何者かに襲われる事件が起きます。その後、鎌幸自身が拉致されてしまい、直之進が預かっている三人田を狙って、直之進もまた何者かに襲われるのでした。
一方、同僚の同心が殺害され、その下手人を捉えた富士太郎でしたが、そのすぐ後に今度は同僚の先輩同心が殺されるという事件が起きます。その上、奉行所では何とも奇妙な人事が行われているのでした。
三人田という刀をめぐる話はいまだ終わってはいませんでした。三人田という名刀にはまだ隠された秘密があり、その秘密をめぐる暗闘が続いているのです。
とまあ、名刀三人田をめぐる話は尽きません。それは良いのですが、何とも筋立てが雑に感じられてしまいます。三人田に隠された秘密があることは良いのですが、その秘密が話の流れの中であまり必然性を感じません。
とってつけたように「秘密」を持ちだされても、読者としては話について、いや物語の世界に入っていきにくいのです。その上、その秘密に関わる敵役の設定も半端な印象です。
このところ、このシリーズに関しては筋立てに文句をつけてばかりいるようです。好きなシリーズだけに、もう少し感情移入しやすい設定を設けてほしいものです。