幕末の北但馬。寂れつつある農村の郷士・清吉は、病気の母と借財を抱えながらも、つましく暮らしていた。ある日、私塾に通う仲間・民三郎が刃傷沙汰を起こす。清吉は友を救うべく立ち上がるが、事態は思わぬ波紋を呼んだ。激動の予兆に満ちた時運に、民三郎らが身を委ねていくなか、清吉はただ日常をあくせくと生きていく道を選ぶのだった。名もなき青春群像をみずみずしく描いた傑作時代長編。(「BOOK」データベースより)
志水辰夫の描く第二弾の長編時代小説です。
幕末、若者は時代の変革に乗り遅れまいとしますが、主人公の暮らす田舎へも時代の波は押しかけます。
病の母の看病に追われる主人公はその波に飲み込まれようとする仲間を引きとめますが、時代はそれを許そうとはしません。主人公とその仲間の生きざまを描きだす名品だと思います。
いわゆるヒーローが活躍するハードボイルドではありませんが、主人公の内面を叙情的な文体で照らしだす本書はまさにシミタツ節です。
本書は志水辰夫の時代物第二作です。