志水 辰夫

イラスト1
Pocket

新刊書

徳間書店

写真は Amazon にリンクしています。

楽天Booksは 疾れ、新蔵 [ 志水辰夫 ] へ。


新蔵は越後岩船藩の江戸中屋敷に向かった。姫を国許に連れ戻す手はずであった。街道筋には見張りがいる。巡礼の親子に扮し、旅が始まった。手に汗握る逃走劇の背後には、江戸表と国許の確執、弱小藩生き残りをかけた幕府用人へのあがきがあった。そして、天領だった元銀山の村の秘密、父子二代に亘る任務のゆくえも絡み一筋縄ではいかないシミタツの魅力満載!山火事が迫る中、強敵と対決する!姫を伴った新蔵の旅は成就するのか? (「BOOK」データベースより)

志水辰夫が4年半ぶりに発表した長編時代小説です。

一人の男が江戸から越後の国元まで十歳の志保姫を連れ戻す、それだけの物語です。しかしながら、細谷正充氏が「逃走と追跡のドラマは、冒険小説の十八番」と書いておられるように、逃走劇こそは冒険小説の格好の舞台でした。

本書は、読み始めてしばらくは、読者には新蔵が国元まで幼い姫を連れて逃げなければならない理由は不明のままです。しばらくはそのままで、途中で拾った駕籠かきの政吉と銀治やわけありのおふさ、それに敵役の藤堂兄弟などの登場人物が色を添えているといった程度で、逃避行それ自体はそれほどに取り上げて言うべきものは無い、などと思いながら読み進めていました。

ところが、中盤あたりから物語が動き始めると、面白さは急に増してきます。更にクライマックス近くになり、この物語の隠された事実が明らかになり、それぞれの思惑が見えてくると、志水辰夫の物語です。そして、物語の終わり近く、藤堂兄弟との決着がついた後、とある女性を掻き抱いてからの新蔵の心情はまさにシミタツ節健在でした。

志水辰夫という作家は、もう80歳になるそうですが、それでいて本書のようなバイタリティあふれる作品を書かれるのですから大したものです。


冒険小説の名作中の名作であるG・ライアルの『深夜プラス1』も、フランス西岸のブルターニュからスイスとオーストリアの中間にあるリヒテンシュタインという小さな国まで、マガンハルトという実業家を運ぶだけという文字通りの逃走劇でした。この物語でも『ハヤカワミステリ』の「冒険小説人気キャラクター」部門で1位を獲得するほどの人気を博したハーヴェイ・ロヴェルなどの名物キャラクターがいました。

名作と言えばもう一冊、 D・バグリィの『高い砦』もあります。こちらはアンデス山中でハイジャックされ生き残った九名の、山中からの脱出を描いた作品です。彼らを追うのは軍事政権側の部隊が追いかけてきており、朝鮮戦争の生き残りであるパイロットのオハラを中心にした闘いの素人である九名の生存者たちの闘い方のユニークさもあり大人気となった小説です。

[投稿日]2017年07月05日  [最終更新日]2017年7月5日
Pocket

おすすめの小説

おすすめのハードボイルド小説(国内)

私立探偵沢崎シリーズ ( 原 尞 )
シリーズ第二作目の私が殺した少女では1989年の直木賞を受賞しています。かなり人気の高い、正統派のハードボイルド作品です。
テロリストのパラソル ( 藤原伊織 )
世に潜みつつアルコールに溺れる日々を送る主人公が自らの過去に立ち向かうその筋立てが、多分緻密に計算されたされたであろう伏線とせりふ回しとでテンポよく進みます。適度に緊張感を持って展開する物語は、会話の巧みさとも相まって読み手を飽きさせません。
探偵・畝原シリーズ ( 東 直己 )
札幌を舞台にしたハードボイルド小説です。探偵の畝原の地道な活躍を描き出しています。映画化もされた、ユーモラスなススキノ探偵シリーズの方が有名かもしれませんが、このシリーズも実に味わい深いものがあります。
新宿鮫 ( 大沢 在昌 )
この作品はシリーズ化され、4作目「無間人形」では直木賞を受賞していますし、9作目「狼花」、10作目「絆回廊」では日本冒険小説協会大賞を受賞しています。
紀之屋玉吉残夢録シリーズ ( 水田 勁 )
門前仲町の芸者置屋「紀之屋」の幇間である玉吉を主人公とした、軽いハードボイルドタッチの読み易いシリーズです。
本

関連リンク

志水辰夫公式ページ〈志水辰夫めもらんだむ〉
街道をかわして逃げろ。国許に連れ帰る姫の類いまれな魅力は駕籠かきや、道中出会う誰をも魅了する。新蔵の強さも半端ではない。書き下ろしエンタテイメント時代長篇。
疾れ、新蔵 志水辰夫 著 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
志水辰夫は二〇〇七年に『青に候』で現代小説から時代小説に転向したが、本書には『飢えて狼』『背いて故郷』などの初期の冒険小説への回帰がある。
「疾れ、新蔵」志水辰夫著|BOOKS|BOOKS|日刊ゲンダイDIGITAL
シミタツの新作を読むことができるとはうれしい。江戸から越後までの急ぎ旅を描く長編である。
衰えぬ創作意欲 志水辰夫4年半ぶり長編「疾れ、新蔵」 - 本のニュース
『行きずりの街』などで知られる「シミタツ」こと志水辰夫さんが、4年半ぶりとなる書き下ろし長編『疾(はし)れ、新蔵』(徳間書店)を刊行した。
東京新聞:疾れ、新蔵 志水辰夫 著:Chunichi/Tokyo Bookweb
志水辰夫は二〇〇七年に『青に候』で現代小説から時代小説に転向したが、本書には『飢えて狼』『背いて故郷』などの初期の冒険小説への回帰がある。
時は天保、姫とゆく逃亡の旅…今年80歳の名手復活
二〇一一年に長篇『夜去り川』と連作集の『待ち伏せ街道』を刊行してから四年半余り。もう引退なのかと愛読者を不安がらせた志水辰夫の待望の最新時代長篇である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です