笹本 稜平

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新刊書

文藝春秋

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津田悟がマッキンリーの厳冬の未踏ルートの挑戦し連絡を絶った。吉沢國人は現地の山岳ガイドたちと共に冬のマッキンリーに登ることになる。アラスカを舞台にした一大プロジェクトが進行している中、津田は何故マッキンリーに挑んだのか。吉沢國人を始め、救助に同行した現地のガイドたちや津田の妻の祥子、山仲間で仕事のパートナーでもある高井らの、津田に対する、また山に対する思いが語られる。

本書は新刊書で492頁という大部の本です。その紙面の多くが登場人物の山に対する思いの吐露、独白で占められていると言っても過言ではありません。作者の笹本稜平は本作で、従来から言われてきた「人は何故に山に登るのか」と言う問いに答えを出そうとしているかに思えます。

皆、津田悟は何故マッキンリーに命をかけてまで登ったのかと問いかけます。その問いは津田悟という人間その人の内面を深いところまで考察しようとし、次いで人は何故山に登るのかと問いに至り、最後には人は何故生きるのか、という問いにまで辿り着くのです。

作者は、登場人物の一人であるワイズマンに、人は「自分で輝かそうとしない限り、人生は生まれて生きて死ぬだけ」だと言わせています。そして「自分の人生に意味を与えられるのは自分だけ」であり、それは「義務」だと言わせているのです。この言葉が作者の心情なのでしょう。

笹本稜平の手による山岳サスペンス小説の『還るべき場所』や、冒険小説としての色合いが濃い『天空への回廊』のような、エンターテインメント性の強い小説を期待していると違和感を感じるでしょう。娯楽作品以上の何かを求めていない人にとっては、もしかしたら随所で語られる教訓めいた台詞に食傷するかもしれません。

しかし、そうした人たちも、山岳小説としての迫力は十二分に堪能することができると思います。津田を救出する過程で語られる冬のマッキンリーの描写は相変わらずに圧倒的な迫力で迫ってきます。更に、津田は生きているのか、吉沢たちは津田を助けることができるのか、というサスペンス感も満ちており、その先に津田がマッキンリーに登った理由の解明と言う関心事もあります。その上で登場人物たちの言葉をかみしめることができれば、更に読み応えのある作品になると思うのです。

[投稿日]2015年04月04日  [最終更新日]2015年4月4日
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