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札幌の刑事だった川久保篤は、道警不祥事を受けた大異動により、志茂別駐在所に単身赴任してきた。十勝平野に所在する農村。ここでは重大犯罪など起きない、はずだった。だが、町の荒廃を宿す幾つかの事案に関わり、それが偽りであることを実感する。やがて、川久保は、十三年前、夏祭の夜に起きた少女失踪事件に、足を踏み入れてゆく―。警察小説に新たな地平を拓いた連作集。(「BOOK」データベースより)

昨年(2016年)の6月に綾野剛主演で『日本で一番悪い奴ら』という映画が上映されました。現実に北海道警察に勤務していた稲葉圭昭警部(当時)が惹き起こしたいわゆる「稲葉事件」の真実を、当の本人が書いたという『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』という本を原作にした映画です。

この北海道警察の不祥事はかなり大騒ぎになり、勿論小説の題材としても取り上げられています。例えば同じ 佐々木譲の手になるものとして『笑う警官』がありますし、東直己も『熾火』他の作品で道警の裏金問題をこっぴどく取り上げています。

道警はこの事件の後始末の一つとして、同一地域での長期勤務は癒着を生むとして、数年おきの異動という手段に出ました。その結果、札幌で刑事の職にあった本書の主人公も片田舎の駐在所勤務になったのです。個々の警官の経験など考慮されていない人事だったと聞いています。

主人公の川久保巡査は、慣れない交番勤務ではありますが、町の生き字引の力も借りて、小さな町での顔見知りという利点を存分に生かし、細かな違和感をつぶしていきながら起きた事件の真相にたどり着きます。

主人公の川久保巡査の行動が丁寧に描写され、また所轄の刑事らとの衝突をも辞さない川久保巡査の構えが実に小気味良く、読んでいることが心地よくなってきます。

本書には「逸脱」「遺恨」「割れガラス」「感知器」「仮装祭」という五つの短編が収められていて、それぞれに偽装殺人や中国人研修生の問題や排他的な地域性の絡んだ事件、そして放火に誘拐という事件が扱われています。

小さな町にしては大事件が起きすぎとも思えるのですが、それはそれとして主人公の造形がうまく、さらに物語の運び方に遅滞がなくて読みやすいのです。続編の『暴雪圏』も出ています。こちらもなかなかに読み応えのある作品でした。

本書は内藤剛志主演でテレビドラマ化もされているようです。私は見ていないので何とも言えませんが、内藤剛志というキャスティングは個人的には違和感を感じませんね。

[投稿日]2017年04月06日  [最終更新日]2017年4月6日
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