西條 奈加

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文庫

新潮社

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『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した著者の、人情味にあふれた連作の時代短編小説集です。

裏家業を持つ悪党たちばかりが住む長屋に、本物の善人である加吉という男が新しく住まうことになった。この加吉が善人であるために様々な善意を施すものの、自分ではその始末をつけることができず、結果として長屋の面々がその善意を手助けすることになるのだった。

舞台設定は魅力的で、文章も読みやすく人情味豊かな長屋の人々を描いた物語であり、面白くないとは決して言えない物語です。しかし、どこか私の琴線には触れませんでした。

長屋の差配の儀右衛門の娘で、この物語の主人公と言っていいお縫は、加吉の持ちこむ難題を見ぬ振りができず、その結果、お縫に引きずられて長屋の小悪党たちが加吉を助けることになります。結果として、当たり前のことですが物語としてはそれなりの結末を迎えます。しかし、その結末もすんなりと受け入れられないのが、個人の好みに合わないということでしょう。多分、このお縫の行動が身勝手な感じがして、感情移入できなかったのだと思われます。

ただ、最後の加吉を中心とした二編の物語は読みごたえがありました。この二編の内容は私の琴線に触れました。他の物語とそれほどに変わっている訳ではないのに、ただ、主題が加吉の背景に触れているだけなのに違うのです。

長屋を舞台にした作品は多数あり、そのどれもが人情時代小説としてそれぞれの面白さを持っています。その中で自分の好みのものを見つけることも読書の楽しみの一つだと思います。

[投稿日]2015年12月22日  [最終更新日]2015年12月22日
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