逢坂 剛

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文庫

文藝春秋

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禿鷹シリーズの三作目です。

マスダへの対抗のため、渋六興業と敷島組とは対立しつつも共同戦線を張っていた。しかし、ハゲタカは敷島組の若頭の諸橋をマスダのアジトへと連れていき、身柄をそのまま預けてしまう。マスダとの共闘を持ちかけるマスダの幹部だったが、筋を通す諸橋はそれに応じようとはしないのだった。

本作品では、禿富刑事、渋六興業、マスダという三者に加え、敷島組の今後についての思惑もあり、その対立が緊張感を持って描かれています。

ただ、本作品に関しては禿富刑事の冒頭での行動意図が分かりにくく、若干の欲求不満が残ってしまいました。敷島組の若頭の諸橋を増田に預けるということは場合によっては諸橋の命はないことも分かっていたはずです。にもかかわらず預け、実際諸橋は命を落としてしまいます。

作者が本人の内心を描写しないため、ハゲタカの行動や他の人物の言動から類推するしかないのですが、登場人物も禿富刑事の行動の意味が分からないと言っているのですから、読者も当然分かりません。禿富刑事は、諸橋の女である真理子を手に入れるためだと言っていますが、それすらも本心かどうかは分からないのです。

結局、シリーズ全体の流れ、今後の展開からは何らかの意味があるのかもしれませんが、これまで読んできた限りでは不明です。強烈なキャラクターを持つ主人公の魅力で成り立つシリーズだけに、もう少し禿富刑事の行動の意味をはっきりとさせて欲しく感じました。

勿論、作者の意図するところを私が読みとれていない、ということが一番可能性があるのです。ただ、書評家の西上心太氏は、ダシール・ハメットの『血の収穫』をやりたいのではと言っておられます。「無法の街に現れ、並立する組織の間を泳ぎ回っては対立を煽っていくコンチネンタル・オプ。どうもオプと禿富の姿がダブって見えるのだ。」と書いておられます。

そう言われればそうとしか思えなくもありませんが、これまでのハゲタカの印象からすると、金づるである渋六興業までをもつぶそうとするのだろうか、という疑問は残るのです。

ともあれ、個人的には若干の不満の残る作品ではあるのですが、それでも面白い、お勧めの小説であることには間違いはありません。

[投稿日]2015年12月06日  [最終更新日]2015年12月6日
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