荻原 浩

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本書『オイアウエ漂流記』は、南の島に漂流した十人の姿をユーモラスに描く長編のサバイバル小説です。

読み始めはこの作家ははずれかと思いつつ読み進めていたのですが、しかし、物語がサバイバル生活に入った頃から俄然面白くなってきました。

南太平洋の上空で小型旅客機が遭難、流されたのは…無人島!?生存者は出張中のサラリーマンと取引先の御曹司、成田離婚直前の新婚夫婦、ボケかけたお祖父ちゃんと孫の少年、そして身元不明な外国人。てんでバラバラな10人に共通しているのはただひとつ、「生きたい」という気持ちだけ。絶対絶命の中にこそ湧き上がる、人間のガッツとユーモアが漲った、サバイバル小説の大傑作。(「BOOK」データベースより)

 

テレビで放映された『愛しの座敷わらし』の原作者が荻原浩だと知り、図書館で荻原浩という名前を見つけるとすぐにに借りました。それが本書『オイアウエ漂流記』でした。

 

 

本書『オイアウエ漂流記』は、書いてあることは、漂流記とは言っても子供の頃読んだジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』とは違い、南の小島で生き抜いて行く漂流者たちの日常が描かれているにすぎません。

海賊も、悪漢も現れません。ひたすらその一日を生きるのです。

 

 

その一日を生きるための、水を確保するその方法、火のおこし方、トイレの確保等々、サバイバル生活に必要な知識がこれでもかと詰め込まれています。

基本的なサバイバルの知識はかつて南の島で戦争をした経験を持つじいちゃんを配し、まずは生きていく上での基本は確保したうえで、「生きる」ということに特化して人間関係を絡めたドラマ作りが為されています。

つまり、遭難者同士の実社会での力関係が遭難後でも微妙な関係性を保ちつつ生きていたり、恋人や夫婦(になろうとする者)の関係性の変化など、その姿がユーモラスに描かれているのです。

 

そうした様々の要素の上に成り立っているのこ作品は、やはり面白いです。

いわゆる冒険小説や推理小説のような刺激的な展開はありません。しかし、それでもなおユーモアを抱えながらの意外な物語の展開は読者を引きつけて離しません。

 

ちなみに、「オイアウエ」は喜怒哀楽全般を表すトンガ語であり、感嘆詞として使われるそうです。

[投稿日]2015年04月08日  [最終更新日]2020年7月11日
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