中山 七里

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口にフックをかけられ、マンションの13階からぶら下げられた女性の全裸死体。傍らには子供が書いたような稚拙な犯行声明文。街を恐怖と混乱の渦に陥れる殺人鬼「カエル男」による最初の犯行だった。警察の捜査が進展しないなか、第二、第三と殺人事件が発生し、街中はパニックに…。無秩序に猟奇的な殺人を続けるカエル男の目的とは?正体とは?警察は犯人をとめることができるのか。(「BOOK」データベースより)

本作品は、『さよならドビュッシー』で第8回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞を受賞した作者が、同時に同大賞に応募していて高い評価を受けて出版に至った小説で、意表をつくストーリーが話題の長編ミステリー小説です。

最初の被害者は、ほとんど住人のいないマンションに顎からフックを掛けられて吊るされており、二番目の被害者は、廃車の車のトランク入れられた死体ごとプレス機に掛けられて発見され、三人目は解体されて内臓をさらされと、その残虐性はとどまるところを知りません。

埼玉県警の捜査一課の古手川和也は、捜査の過程で当真勝雄という若者を担当し、保護司である有働さゆりと会い、その息子真人とも知り合いますが、彼らとともにこの事件の渦中に放り込まれることになるのでした。

この作者は『さよならドビュッシー』を第一作とする「岬洋介シリーズ」しか読んだことが無く、そのシリーズの持つ音楽表現の素晴らしさに心惹かれていたのです。

しかし、本書では、確かに有働さゆりのピアノを引く場面で音楽表現の一端は示されているものの、何よりも殺戮場面の陰惨さと、読者のミスディレクションをさそう手腕に驚きました。

考えて見ると、『さよならドビュッシー』でもその手法は発揮されていたのであり、何をいまさらという感想でもありすが、事件の猟奇的な描写は 誉田哲也にも劣らないものです。この手のグロテスクな描写の苦手な人にはお勧めできない作品ですね。とくに、サイドストーリ的に挟まれるナツオという人物の話が読者のミスリードを誘い効果的です。

また、本書自体刑法三十九条での「責任能力」の問題への問いかけにもなっており、問題の根の深さが感じられます。

刑法三十九条の「責任能力」の問題熱かった小説としてネットで調べて見ると、薬丸岳の『虚無』がよく挙げられています。

私は未読なので何も書けないのですが、ざっとあらすじをまとめると、通り魔により娘を殺されたものの、犯人は「心神喪失」状態であったとして罪に問われることはなく、心に大きな傷を負い妻とも別れてしまった男の物語、だそうです。


また、映画「臨場 劇場版」でも、刑法第39条の取り扱いが焦点となっています。もともと「臨場」は、 横山秀夫による『臨場』という鑑識課員を主人公とする警察小説を原作とするテレビドラマであり、内野聖陽を主演として人気の高かったシリーズです。

その映画版はオリジナルストーリーで制作されていて、無差別殺人の殺人犯が心神喪失として無罪になった事件から数年後の、その判決に怒りを抱いていた遺族の姿が描かれています。

本書『連続殺人鬼カエル男』のミステリーとしての面白さは、「どんでん返しの帝王」と呼ばれる作者の面目躍如たる意外性にあり、驚きに満ちています。

ただ、欠点も多く、殺人犯に対して恐慌状態に陥った一般市民が過剰反応を起こし警察署を襲うという展開にはついていけません。いくらなんでもという気持ちが先行し、感情移入できないのです。個々の市民の個別の過剰反応とは別の次元ですので、ちょっといきすぎとしか思えませんでした。

更にまた、古手川和也が暴行を受ける場面で、その体力というか耐えうる限界が少々高すぎるとしか思えませんでした。もう廃人になるとしか言えない状況での活動は少々無理があり過ぎます。

こうした点を除いてもなお、物語としての面白さは維持できていると感じるのですから、私の贔屓目だけではないと思われます。

ちなみに、殺人鬼のカエル男が出てくる、小栗旬主演の映画があったので、本書を映画化したものと思っていたら、全くの別物でした。この映画「ミュージアム」は、巴亮介という人の「ミュージアム」を言うコミックを原作としているそうです。

[投稿日]2018年01月24日  [最終更新日]2018年1月24日
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