三浦 しをん

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三浦しをんという作家の特徴の一つにキャラクタ造詣のうまさがあると思いますが、本作でもそのうまさはいかんなく発揮されています。

平野勇気(ひらのゆうき)は高校卒業後、三重県の山奥にある神去村で就職することになる。近鉄の松阪で乗り換え、名前も知らないローカル線の終点の無人駅で出迎えたのは飯田与喜(いいだよき)という男だった。さらに軽トラックで一時間ほど走り、神去村の「中(なか)」地区で二十日程の研修を受けた後、村の最奥部の神去地区にある中村林業株式会社へと連れて行かれたのだった。

まずはこの飯田与喜(いいだよき)という男が、山の申し子のような男でユニークです。美人の奥さんを持ち、惚れこんでいながらもよそで遊び、奥さんに叩きだされている男なのです。しかしながら、山に入ると別人のような活躍を見せます。この男ヨキが勇気の世話係であり、ヨキの家に同居することになります。

一年を経た勇気がこの一年を振り返り手記を書いた、それが本書だという設定です。

全くの山のど素人である勇気が、ヨキや中村林業社長の中村清一、長老的存在の小山三郎といった仲間に叱られながらも、よそ者から村の一員へと育っていく様が、ユーモラスに描かれています。当然のように勇気が恋心を寄せる女性も登場します。ヨキの奥さんも美人だし、中村社長の奥さんもそうで、何故かこの村は美人が多いのです。

山里の崩壊、ということが言われ始めたのは何時だったでしょうか。自然と人間との共存など声高に言われたこともありましたが、いつの間にか聞こえなくなりました。そんなところに「林業小説」と銘打たれた作品です。

勿論、本書だけでは林業の実際の苦労、辛さをうかがい知ることはできませんし、作者もそういうことは考えてはいないでしょう。しかしながら、例えそれは少しであれ、現実の林業の一部を示してあることも事実だと思うのです。

単に舞台設定として珍しいというに止まらず、山や木との触れ合いなど、自然の大切さを声高に叫ぶことのない主張は、一読する価値ありだと思います。

[投稿日]2015年03月26日  [最終更新日]2015年3月26日
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